« 美術館を読み解く−表慶館と現代美術展 | メイン | 拡張する絵画—色彩による試み »

2001/02/03

高山良策の世界展

「拳の主張」 


■前回は「チバ・アート・ナウ'00」を紹介したが、今回は「ねりまの美術2001」。地元ゆかりの作家にスポットを当てる展覧会は公立美術館ではよくあること。そういった括りの範囲内でいかにエンターテイメントな出し物を見せるかが、学芸員の醍醐味なんだろうな。そんなことをちらっと考えながら、いろいろな意味で期待していた同展へ向かった。

■企画したのはウルトラマン世代の学芸員・土方さん。私も世代的に近いので、怪獣模型への期待がつのる。子供の頃は誰がつくった怪獣だとかそんなこと気にもとめなかったが、当時、レッドキングやカネゴンといったどこか愛嬌があって憎めない怪獣たちの造形は高山良策氏によるものだった。

■入ると吹き抜けのエントランスには四角いテントが貼ってあった。もちろん作品だ。前衛美術集団個展出品作品「変種空間」とある。中も土足のまま入れて、人型の立体と面白いペイントが迎えてくれる。へえ、こんな仕事をしていたんだ。ちょっとした異空間。中で考え事などすれば、何かひらめきそうだ。

■第1展示室はお待ちかねの怪獣模型が陳列してあった。3体のポール星人が天井からこんにちは。展示ケースの中で大魔神やガラモンがおとなしくしている。なんでこんなイイ表情をしているのかな。壁面には主に晩年の大作が飾られていた。これがまた不思議な世界で、その想像力に衝撃を受ける。奇人がはびこる、この世の絵ではなかった。

■第2・3展示室には幼年からのデッサンや従軍時代のスケッチ、油彩画の代表作が展示されていた。模索を繰り返した時代の痕跡が見て取れるようだ。ところどころ遊び心を感じさせるユニークな立体が点在しているのもいい。同じフロアの1室は「怪獣+怪獣工房」というコーナーで、ウルトラマンと闘う怪獣たちの懐かしの写真が並んでいる。

■先が拳になっている立体のテトラポットが目についた。様々な主張を握りしめて、無言で力強く突き上げる拳。様々な想いを作品に託し世に出してきた高山良策という作家の精神を見たような気がした。

高山良策の世界展
2001年2月3日(土)〜3月20日(火)
練馬区立美術館
東京都練馬区貫井1-36-16
(西武池袋線(有楽町線直通)「中村橋」駅、徒歩3分 )
9:00〜17:00(火曜休、3/20は開館)
一般500円、高大生・65歳以上300円、小中生100円
TEL:03-3577-1821


art126_02_1
これが「変種空間」(1969年)というテントの作品

art126_02_2
テントの中もペイントされていて、面白い空間になっている

art126_02_3
第1展示室の中央には怪獣模型がずらりと並ぶ

art126_02_4
哀愁ただようおばけ?たち「記念撮影」

art126_02_5
「テトラポット」が目立つ第2展示室

art126_02_6
階の1室「怪獣+怪獣工房」。懐かしのシーンに出会えるかも


2001-02-03 at 10:24 午後 in 展覧会レポート | Permalink

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a014e885bb6e5970d015432c74a5a970c

Listed below are links to weblogs that reference 高山良策の世界展:

» ■『怪獣のあけぼの』造形家・高山良策を追った実相寺昭雄監修番組 from ★究極映像研究所★
『怪獣のあけぼの』 (ナゴヤ エレキング ブログさん経由) (SF研つながりの [続きを読む]

トラックバック送信日 2011/06/05 11:52:04

コメント