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2001/02/06

徳田憲樹展

「ダマされた感覚」


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会場風景


■徳田さんが石鹸を作品に使いはじめたのは、もうかれこれ4年ほど前のこと。個展会場は、石鹸の香りが充満していたのをよく覚えている。次の週、ほかの人の展覧会になっても、その香りが残っていた。画廊の入口のガラス扉に、薄くスライスした赤い香り付き石鹸を、円形に貼るなどしていたのが印象的であった。

■あれから徳田さんは「石鹸の作品の人」で、すっかり通ってしまうくらいになってしまった。クルマに石鹸を貼ったり、ギャラリーの床全体に石鹸を貼りめぐらし、海表現してしまうまでに至った。案内状の「嗅覚の生理学―失われてゆく身体」というタイトルを見て、今度は、なにをするのだろうかと画廊へ出掛けてみた。

■予想が裏切られたというか、「こうきたか」という思いで、しばらく画廊の真ん中に立ちつくした。目、鼻、口、足、手の石膏像にブルーの香り付き石鹸を貼ったものが展示されていたのだ。これまで展覧会ごとに会場に合わせて行なうインスタレーション(仮設展示)作品であったために、搬出するたびに使い古しの材料の石鹸が彼の手元に残った。本来は、蓄積された石鹸を用いて像をつくろうとしていたが、石鹸の性質上、強度の問題などが解決できず、石膏像に貼りつけたのだそうだ。

■人工的につくられた色や香りなどが、私たちに必要以上に入り込んでいる現在の日常生活。私たちは皮膚感覚も、味覚も何もかもすっかり、何が本物で、偽物かも判断がつかないほどに麻痺している。私たちの記憶のなかにあるのは、人工的なものばかりで、もともとあった姿なども忘れるどころか、初めから知らない場合すらある。

■画廊を後にしたとき、鼻にかすかに石鹸の香りが残っていた。何の香りなのかすら、よくわからない人口的なその香りのことを思っているうちに、なんだか肢体が魂から遠ざかってゆくような幻覚に襲われかけた。展覧会タイトルを思い出し、「してやられた」と思った。

嗅覚の生理学―失われてゆく身体
徳田憲樹展
2001年2月6日(火)-17日(土)
ギャラリー16
京都市左京区岡崎円勝寺町1-10 スクエア円勝寺2階
(京都国立近代美術館南側疎水沿いを西へ5分)
12:00-19:00 (最終日-17:00)
月曜日休廊 無料
TEL.075-751-9238


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耳も真っ青に石鹸が貼っている

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目は口ほどにものをいういうが…

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石膏像の上に貼ったのではなく、石鹸だけでつくった鼻

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スライスした石鹸と水が用意されていて、観客も石膏像に石鹸を貼ることができる

2001-02-06 at 10:00 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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