2001/01/12
vol.27 櫻田 浩二(Koji Sakurada)
「自分らしい絵を長く描いていきたい」
櫻田浩二さんの作品を初めて見たとき、なんて世界だろうと思った。色彩 も登場人物もとにかく可愛い系なのだが、単にキュートなだけじゃない。自分の中の童心をチクリとつつく何かがあった。近い未来のような、それでいて過去のような不思議な世界。お話の中のヒトコマを切り取ったような絵画の数々は想像力を膨らましてやまないのだ。櫻田さんご自身はとてもシャイで寡黙な人なのだが、さてさて、櫻田ワールドにどこまで迫れるだろうか…。
作家になろうと思ったのは?
■子供の頃から自然に絵を描いてきたので、特に描くようになったきっかけというものはないんです。本格的に描き出したのはデザイン学校へ通 い出してからですね。自由研究のコースに進んだのですが、コースの終わりの頃に自分のスタイルみたいなのが出てきました。かつてイラストレーターを目指していたことがあり、意識的にアートとイラストを分けて考えていた時期がありますが、今は分けることはなくなりました。
◇櫻田さんはずっとアクリルガッシュで描いてきた。発色の良いきれいな色を積極的に使っている。最近は制作にコンピュータを使うこともあるという。ペンタブレットで描いているので感覚は筆と変わらないらしい。
なんともいえない懐かしい世界はどこから生まれるのでしょう?
■僕自身、懐かしい感じが好きですので、少し意識して描いているというのがあります。子供時代への憧れが少しあるのかもしれないですね。モノのフォルムですとか、日常面 白いと思ったものがなんとなく表れているような気がします。それは例えば、気持ちが救われていく情景にしようと思った時に、その前の悲しい部分を含む要素を入れているので、そうした形になるのではないかと思うのですが、説明するのが非常に難しいところです。
◇1点完結の作品なのに、常にストーリーを感じてしまうのが不思議だったが、この話を聞いてなるほどと思った。胸キュンとなるせつないまでの情景描写 は、ストーリーテラーでもある櫻田さんが生み出した比類なき世界なのだ。
櫻田さんの作品を見た人の感想で印象的だったものってありますか?
■以前、「モノに魂を感じる人なのではないか」と言われたことがありました。普段自分が意識してなかった部分でしたので少し驚きはありましたが、モノに対する愛着と人に対する愛着が重なる部分があって、モノに対する愛着が無意識に描かれているのではないかと思うようになりました。モノが自然にそばにあるように、誰かに自然にそばにいて欲しいというようなことなんだと自分では解釈しているのですが。
◇モノにも魂が宿っているとみなすアニミズムが櫻田さんの世界には流れている。小さ きもの、弱きものに温かい眼差しを向ける精神は、大人が忘れてしまった童心の扉をノ ックする。
今後の活動は?
■物語性のあるものを少しずつまとめていきたいと思っています。それを本のかたちにして多くの人に見ていただけたらという願いがあります。画集でもマンガでもいいんですけど出版物にしたいんです。これからも自分らしい絵を長く描いていきたいと思います。そしてマイペースでずっと続けていけたらいいなと思っています。
◇櫻田さんは1997年、吉祥寺のトムズボックスの企画で初めて『こゆび』というマンガを出版した。3つのお話が収録された短編集なのだが、これがせつなすぎて泣けるのだ。 最後の「グラタン」は特に傑作。 ストーリー:娘が出産予定の男の子が障害を持って生まれてくることを知った博士は、その治療のために生き物を作った。生き物は順調に成長、男の子も治療が受けられるような年齢まで成長し、治療のため生き物の体内へ入れられる。2人には対話ができた。「体がね、とても楽になっていくよ」「良かった。何も変わらなかったらどうしようって思ったから」「助けてくれて、ありがとう」男の子は日ましに回復、生き物は徐々に弱っていった。自分が助からないことを知った生き物は、最後に一目博士に会いたいと病院を抜け出す。だが体力尽きて海の底へ沈んでいく。翌朝、生き物は陸に跳ね上げられ、生き物の体内から男の子が出てきた。すっかり健康な状態になっている。既に博士がこの世にいないことを知った生き物は次第に身体が溶けだし雪のように散っていった。
櫻田浩二 HP「ちいさな展覧会」
http://www.j-link.ne.jp/~sakura/koji.html
近々大幅リニューアル予定有り
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words:斎藤博美
「冷蔵庫くん」
「アクアリウム」
「コーヒー」
「初恋」
「キューティクル」
「電気ストーブ」
「とこやさん」
「おはなし」
「ありか」
櫻田浩二(Koji Sakurada)
1970年 東京生まれ
1992年 東京デザイナー学院 ビジュアルデザイン科グラフィック専攻 卒業
デザインプロダクションにデザイナーとして勤める
1994年4月 イラストレーターとして個人で仕事を始める
1995年2月 初個展「くるみもうふの約束」 西麻布ゲジラNO,1
1997年8月 トムズボックスから絵本『こゆび』を発売
2000年1月 小説『うわさのベ-コン』(太田出版)カバーイラスト
2月 太田出版「クイック・ジャパン」短歌集挿し絵
8月 群馬県立近代美術館 「むし・虫・ワールド」出品
個展、グループ展、多数
2001-01-12 at 01:00 午後 in アーティスト・ヴォイス | Permalink
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