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2001/01/23
沓澤貴子展
「あいだの感情」
「Slower」2000年
■自分の感情を相手に伝える言語をもてない人が増えているといわれる。「超ショック!」のようなK点越えなら伝えられるのに、滞空時間には耐えられないような。
■自分の感情を相手に伝える言語をもてない人が増えているといわれる。「超ショック!」のようなK点越えなら伝えられるのに、滞空時間には耐えられないような。
■'71年生まれの沓澤貴子は、言葉にして語ろうとする前の、言葉になっていない感情、もしくは感情にまでに至らぬままに漂う感覚を描いている。絵の具を重ねたり、前に描いた線を消したり、拭き取ったりしながら、色や形がだんだん定着していくまで、ギリギリまで“絵を動かした"という。遠くから眺めると、淡くてきれいな印象なのだが、近づいて見るとかなり重層的で、じわじわと引き込まれる。タッチもほわっとしていたり、引っ掻いていたり、にじんだようだったり、かすれたようだったり。まさに1人の人間のように1枚の画面の中に多様に。逆に、年をとると引き算ができたり、同じ調子で持続することができるんだな、と思ったりもした。
■しかし、感情に溺れすぎると自己完結し、見る人にスキを与えないので、何度も描いたら数カ月手を付けずに置いておくこともするそうだ。しばらく時間を置いてから見ると何かが見えてきたり、描く自分が変わっていることに気づいたりするという。1枚の絵にかなりの時間が経過していて、キャバスの地に近い下の方には、以前の自分が見えるという。写実は、描いている今そのものの時間が定着すると考えるから、写真などは見ずに、回想気分で描くそうだ。
■私たちは、わりきれない思いにも、ちゃんと付き合っていたほうがいい。すぐにふっきるのではなく、なるべく長く持ちこたえてみたり、客観的にその感情を眺めてみたり。そんなもやもやが、絵のわからなさの中で「あ、これだったのか」と(自分の勝手な解釈だったとしても)消化されたりもするから。そのほうが実は少し遠くへ飛べる気がする。
沓澤貴子(くつざわたかこ)展
2001年1月23日(火)〜1月28日(日)
ガレリア ラセン
東京都国立市中1-9-44野木ビル5F
TEL.042-571-2558
words:白坂ゆり
「Prisoner」2001年
会場風景
「回想/五月」2001年
「回想/赤い花」2001年
「still-2」2000年
2001-01-23 at 08:39 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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