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2000/12/08

FRAGMENTS 1986-2000展、ドキュメント佐賀町・定点観測 1983-2000展

「作品と空間」


art122_01_1NWハウス会場風景。企画展の写真コピーを空間に巡らせた。畠山直哉、戸谷崎満雄、中ザワヒデキ、島野つねお展など約350点。迫力ある作品から一見クールな作品へと移行している印象。


■世紀の節目を機に、複数のアートスペースが閉じられる。経済的理由だけでなく、アートの変容とそれに伴うシステムの変革が問われている時期なのだろう。

■佐賀町エキジビット・スペースは17年、NWハウスは15年の活動を終える。ともにここにしかない空間を特徴とし、それまで画廊の運営経験もない女性ディレクターが、試行錯誤で多くの若手アーティストとともに発表の場をつくりあげてきた場所だ。どちらも画廊が密集した銀座界隈から離れ、佐賀町ESは商人の町、NWは学生の町・早稲田を選んだ。バイリンガルで記録物を作成し、東京の片隅から海外にも発信してきた。これまでの展示記録を見ると、佐賀町のグループ展「YESART DELUXE」で注目された森村泰昌がNWで「名画シリーズ」の初個展を行うなど、相互の熱気が伝わってくる。

■NWハウスの遠藤和子は、アートの社会における認知度の向上をめざした。ヴェネチア・ビエンナーレなどの国際展の報告会、'91年から6人の美術館学芸員や評論家が若手作家を選出し、独自の視点を打ち出す「キュレーターズ・アイ」シリーズなどを行う。また、日曜祝日の開廊や夜8時までの時間設定など見る側へも考慮してきたが、社会的反応や関心の薄さは変わらなかった。企画展を行うために貸しも行っていたが、個人的持ち出しも多く、企業や行政の助成金を集める時間もなかったという。今後は、建築の中にアート作品を入れる仕事に取り組むそうだ。

■佐賀町の小池一子は、'83年、美術館でもギャラリーでもない第三の場所、日本初のオルタナティブ・スペースとしてこの場所を立ち上げた。それは評価の定まった作家しか取り上げない美術館や、貸画廊へのアンチテーゼを含む非営利スペースで、社会への憤りや警告を表す作品もサポートしてきた。

■各作家が佐賀町へメッセージも寄せていた。大竹伸朗が佐賀町に失敗したら作家をやめようと決意し、その大竹展を見た鳴海暢平がいつか自分もここでと決意した、など展覧会が与える影響力や運動の連なりが読みとれる。

■しかしこうした作り手の広がりの一方で、佐賀町もNWもクオリティの高い作品を発信し続けてきたにもかかわらず、受け手である日本社会の反応の鈍さには落胆やジレンマを感じざるを得なかったことと思われる。それでもエネルギーを持続させてきた二人のかずこさんに心より敬意と感謝を申し上げたい。

■また、21世紀はものとして具現化せず、特定の空間を必要としない作品が増えていくかもしれない。展覧会という作品の見せ方も再考されていくだろう。しかし今後も、両空間を目標のひとつとしていた力ある若手作家や、学生の人々の志をくじくような方向へ安易に流れないよう祈りたい。また、第3部の空間を見る展覧会は、空間と結ばれた20世紀の美術について検証する場になるのかもしれない。

FRAGMENTS 1986-2000
2000年12月13日(水)〜25日(月)
ギャラリーNWハウス
東京都新宿区西早稲田1-3-7NWハウス1F
(地下鉄東西線早稲田駅徒歩4分、早稲田通り右手を高田馬場方面へ)
13:00-20:00 火休 無料
TEL.03-3204-0246

ドキュメント佐賀町・定点観測 1983-2000展
2000年12月8日(金)〜21日(木)
佐賀町エキジビット・スペース
(展示空間そのものを見る試み)
2000年12月23日(土)〜30日(土)
東京都江東区佐賀1-8-13食糧ビル3F
(地下鉄半蔵門線水天宮前駅2番出口より徒歩8分。隅田川大橋渡り右折し、直進。「まぐろ屋」先の角を左折)
12:00-20:00 無休 500円
TEL.03-3630-3243

words:白坂ゆり

art122_01_2第1回「キュレーターズ・アイ」より(1991年)。上:高柳恵里展(キュレーター:前山裕司)  下:大森裕美子展(山本和弘)

art122_01_3上:東恩納裕一「快楽のあいまいな対象」写真:宇野一博  下:鈴木隆博展 撮影:谷岡康則(ともに1996年)

art122_01_4佐賀町エキジビット・スペース会場風景。駒形克哉、古郡弘、キーファーら約300点を年代順に展示。掲載記事も閲覧。

art122_01_5中央:「剣持和夫展-KENMOCHI February,1989」

art122_01_6内藤礼「地上にひとつの場所を」(1992年) 写真:林雅之

2000-12-08 at 10:46 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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