2000/11/09
棚田康司展
「異形なものへの畏敬」
会場風景
■手の先が鎌のようだったり、何かに束縛されていたり、棚田康司の彫刻作品を前にするのはやや怖い印象がある。今回は、男と女と子供の3体を中心に構成されていた。それは棚田自身と妻子の像でもあるが、誰しもの友人や恋人や夫婦、家族でもある。
■女性の頭や手は大人だが、胴体は子供。両手のポーズは手術前の儀礼で、(運命を)支配しているが不安も抱えている象徴だという。私には、自分に向けて、あるいは通り過ぎる雑然とした出来事を静かに受け流している姿にも見えた。
■覗き込むような男性像は、目の玉がなく空ろだが、女性像は閉じた目の奥で何かを見ているよう。彼は彼女とコミュニケートしようとしながら、実は彼女の後ろに自分を見ているのだという。私は作家に話を聞く前に、彼女の背後に立ち、彼の異形の姿を彼女の代わりに見たつもりだった。けれど彼は私自身でもあり、私が私を受け止めていたのかもしれない。
■また、彼女の胸にはチェーンソーで傷がつけられている。それは作品として「やるかやらないか」の見極めであり「わからないものへの好奇心」だという。しかし傷つける方も覚悟が必要。不条理ではあるが、相手を傷つけることで、より相手の傷に沿うような人間の性(さが)も感じられる。
■2体に比べ、駆け出す子供の像は不安定ながらポジティブだ。現実に、子供の姿にかつての自分の姿を見つけたり、教わったりするそうで、つくるのも楽しかったそうだ。それでも視線が重ならない3体に、家族も対等な個のつながりなのだなと思う。また、すきまを縫うように水平に伸びた小さな像も、肯定的なイメージでつくられている。不安定さを彫刻というもので安定させるのだそうだ。自分自身を掘り下げ、異なる価値観を行き来しながら、自分を越えたときに本質に近づけるという棚田の作品。私自身を掘り返すことを恐れずに見たい。
棚田康司展
2000年11月9日(木)〜12月9日(土)
ミヅマアートギャラリー
東京都渋谷区神宮前5-46-13ツインエスビル1F
(地下鉄表参道駅B2番出口より徒歩6分。青山通りを渋谷方向へ、無印良品右折し直進)
11:00-19:00 日月祝休 無料
TEL.03-3499-0266
words:白坂ゆり
「friends・a」(以下すべて2000年)
「friends・b」
「Go Go」
「Drawing」
「Works-Yes-1」
2000-11-09 at 10:05 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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