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2000/11/01

中村ケンゴ展

「ジャパニーズ・ポップのあとさき」


■仕事では訪れるが、お台場は苦手だ。とってつけたような人工の街。すべてがナビゲートされ、ディズニーランドとともに「想像」という言葉を脆弱にしている。けれど、中村ケンゴが4年ぶりの個展会場に選んだそのカフェだけはホッとできた。モンドリアン風に間取りを描いた作品や、「考えさせられる人」など、西洋絵画をもとにマンガのフキダシがつまった旧作絵画が、天井高5メートルの空間に気持ちよく並ぶ。

■新作は、マンガのモブ(群衆)シーンなど、主役ではないキャラクターの図像をサンプリングし、日本画の画材で描いたものだ。主に手塚治虫マンガからの引用だが、もともと映画の手法を持ち込んでいるから、シルエットだけでも躍動的。すっころんだり、走り出したり……。ざわざわと動きだし、叫んでいるようにも、声がかき消されているようにも見える。

■中村は、デビューした'94〜'96年、フキダシやかわいいカエルのキャラクターをサンプリングし、あえて表面的にポップに徹したアイロニカルな作品を発表していた。しかしあるとき彼自身が、SPEECH BALLOON MANのように、またはウディ・アレンの映画「カメレオンマン」のように、状況に合わせる術を洗練させすぎて、どれが本来の自分か不明な堂々巡りに陥ってしまったという。自分はなにが好きか嫌いかもわからない。そのとき、自分が描いた絵が自分で良いといえるかどうか、絵を描くことが唯一の自己確認の手段となったのだそうだ。

■だから「人間」が描きたかったという。イメージの返りが速いマックではなく、思い通りにならない日本画の顔料で。ウェブデザイナーのイメージも強い彼は、「自分は絵描きだと言いたかった」とも語った。

■アイロニーもまた、答えに向け短時間でナビゲートするものだ。それは納得した段階で、自分から遠いものとなる。とはいえ、作家の心情を共有しようとするのも違う気がする。彼の作品から、西洋のスタイルを踏襲しようとしても微妙に温度が上がってしまうような生っぽさを、人工的な街と対照的に感じ、それについて考えている。

中村ケンゴ展
"The World According to Us 2000"
-「本朱、群青、山吹」-
2000年11月1日(水)〜30日(木)
"www."so-net/cafe(トリプルダブリュ ソネットカフェ)
東京都港区台場1-7-1メディアージュ5F
(ゆりかもめ お台場海浜公園前駅)
11:00-22:30 無休
TEL.03-3599-5270

※11/18(土)高野寛(ミュージシャン)とのトークショウあり
関連サイト http://www.so-net.ne.jp/tokyotrash/

words:白坂ゆり


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会場のカフェ。設営での交渉や、美術を普段見ない人々の前で作品をさらすことに、今は作家自身へのフィードバックがあるという。観客は、カフェのレンタルPCでメッセージも流せる。

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「COMPOSITION TOKYO」1994-1998年
東京のワンルームマンションやアパートがモチーフ。(以下すべてパネルに和紙、岩絵の具、顔料)

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「SPEECH BALLOON MAN-player-(祈り)」1996年

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「People except for me(自分以外)」2000年

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「People except for me(自分以外)」より
青は海と空の色。自然光が入る昼間は、清々しそうだ

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「the people(人々)」(部分)2000年  その隣には、地球をつかんでブルブル振ると、さまざまな国々がパズルピースのようにパタパタ落ちてきたイメージで描いた絵画がある。

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外に出るとレインボーブリッジが見える

2000-11-01 at 04:35 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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