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2000/11/17
ヒグマ春夫展 ことばのイリュージョン
「踊る文字」
■会場である「ギャラリー無寸草」は初めて足を運ぶところだった。路地裏に入ったところにある土壁の民家で、すでに入口から独特の雰囲気があった。竹の手すりのついた急な階段を上がると和建築ならではの懐かしい空間が広がった。ギャラリーはこのフロア全体で、ヒグマ春夫さんの映像作品は右手のコーナーで常時流れていた。奥には小さな椅子が並び、そこに腰掛けるとちょうどビデオが終わり巻き戻しが始まった。
■映像作家・ヒグマ春夫さんの作品には、最近「文字」が組み込まれている。それは四字熟語だったり、単体の漢字で、海や街を撮影した実際の映像とミックスされているのだ。4本のビンと「空即是色」という文字が絡んだり、「意味深長」と廃品を使ったアーティスト作品の映像がコラボレートしたりと、文字と背景の実写が呼応した不思議な作品である。文字が呼吸をし、踊っているのだ。まるで生命体のように。
■文字と映像との関係を読みとるのも面白い。「火」と海、「食」とマクドナルドの看板、「刻」とメトロノームなど、単体漢字と映像はごくシンプルな関係が多かった。それぞれが小さなストーリーを展開し、次の文字へバトンタッチする。文字は踊るばかりでなく形がくずれて溶け出すなど、様々な表情をみせてくれる。実写と見事に一体化したビジュアルに、いつのまにかのめり込んでしまった。
■ビデオが最後まで回り、また巻き戻しが始まった。あっという間に1時間。文字のダンスがこんなに面白いなんて発見だった。漢字自体の意味が無意識にインプットされているということも踏まえた作品だからだろう。ちなみに、今でもハジケル文字たちが頭から離れない状態…。
ヒグマ春夫展 ことばのイリュージョン
2000年11月17日(金)〜11月22日(水)
ギャラリー無寸草
東京都中野区本町6-13-10
( 地下鉄丸の内線「新中野」1番出口より徒歩3分)
12:00〜20:00(無休)入場無料
TEL 03-3229-0107
展示室は段ちがいの3枚のスクリーンが並び、映像を立体的に見せる効果を発揮
海の映像をバックに踊る「火」
「空即是色」という文字が4つのビンから出てきて整列
「空」「水」「砂」と海で踊る女性のコラボレーション
このデジタルビデオが捉えた映像がスクリーン奥のモニターにリアルタイムに映し出されている
ギャラリー入口から独特の雰囲気が漂う
2000-11-17 at 05:09 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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