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2000/10/20
vol.25 伊東 篤宏(Atsuhiro Ito)
「僕が見たいものを一緒につくる」
最近、アーティスト主宰のスペースが少しずつ誕生している。今年7月、代々木にも「OFF SITE」という、ギャラリーと簡単なカフェ、サウンドやノイズ系CDやレコード、ペヨトル工房の本のショップとしての機能も備えたスペースがスタートした。蛍光管のインスタレーションやサウンド・パフォーマンスを行っている伊東篤宏と、川口現代美術館に務めていたゆかり夫妻が運営する。音好きな人々も集り、新しい空気を生み出しつつある。スペースを立ち上げた動機と自身の制作について尋ねた。
OFF SITEのきっかけは?
■画廊では人の出入りも含めて広がりが少ないと感じて。僕の力量の問題もあるけれど。また、美術をやる前に「音」を演っていたんだけど、また始めてみると発表する場所も少ない。海外のフリースペースのように、美術の領域で音に関するアーティストがもっとやれる場所が欲しくて、自分で始めました。
音の人たちとは長いつきあい?
■いや、ここ最近知り合ってる。音の人はメディアの形態が整っているせいもあるけど、フットワークが軽く、横のつながりが強い。ここ数年、美術の側から音を思考している表現と、ミュージシャンがポップミュージックとは違うラインで音を追求して出てきた表現が、近い位 置にあるんですね。同じとは思わないけど。それが何かを生むのか、一過性なのかはわからないけれど、僕の企画の月1回のライブ「絶対アンテナ」では、両方の立場の人に一緒に出てもらう。美術からも音楽からもはみ出た、どう名づけていいかわからないフォームを体感してもらいたい。もうひとつの月1ライブは、インプロヴィゼーション(即興演奏)を、ライブハウスではなく音をゆっくり聴ける場で演りたい人たちが使っています。彼らが海外から美術家をゲストに呼ぶこともある。
音楽の人は、自分の作品を自分で発信しますね。
■音楽は、ライブ以外の記録物を発表と宣伝形態として確立しているうえ、今はCDRも自分で焼け、インターネットもあり、よりパーソナルな流通ができる。でも美術は、同じものを大量にはつくれない。メディアの速度は違うけれど、これは逆手にとるべきで、その場所でしか体感できない意義もある。問題は、美術家が発表の場に対して受け身であり、慣れちゃっていること。音の人たちは、場を探したりつくることに貪欲。貸し画廊を否定するのでなく、自分がどうしたいか作家自身が考えて動くべき時だと思う。アーティストが場所を立ち上げるのもブームになっちゃうかなと思うけど、ウチも含め切磋琢磨して残るところは残ればいい。実際に運営し、人を集め、お金を得ることを美術家はやっていない人が多いから、自分がつくったものがお金を生むとか、ある種の責任を派生させているという意識を、持っていったほうがいい。
でも、経営するのは大変では?
■全部自分らでつくっているから、カラダはつらいけど、お客さんも来てくれるし。音は身体的なので、反応がダイレクトで楽しい。展覧会の反応にはタイムラグがあるよね。もっと話せる場があっていいと思う反面 、時間が経ってもふと日常のなかで何なのか考えさせる力は美術にしかないかもしれない。
ところで、音楽と「音」は違いますね?
■僕は、蛍光管から出るダイレクトな音を使っていて、サンプリングもしない。音を使ったフォームで作品をつくっている。音楽は、音を使って組み立て直したものと考えます。
ギャラリーの方針について
■ウチの奥さんがメインの企画ですが、作家にこれまでやれなかったこと、やりたいことを言ってもらい、金銭的バックアップはできないけど、僕らも一緒につくっていく。期間も2カ月。いろいろな人に広げるより、腰を据えてじっくり。それからマルチプルなど流通 できるものも出してもらいます。観客がアートを身近な生活に取り入れられるよう、価格の手に入れやすいものを考えてもらう。展覧会に派生する、さまざまな人や社会との関係など、意識的に作家と一緒に考えたい。アーティストが職業として成り立つために。
OFF SITE
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-23-7
(JR代々木駅西口からガード下抜け、NTTドコモビルの道路をはさみ右側。ファミリーマート右手にヤマトシステム右折)
火〜金 18:00〜22:00 土 15:00〜22:00 月休
ギャラリー入場料無料
TEL.03-3341-5557
今後の予定
2月中旬から タナベマサエ展
平面を譜面と見立てミュージシャンの杉本拓が演奏、今度はその音の印象を主軸に展示形態を変える。それを見てまた演奏するという実験的なコール&レスポンスを繰り返す。
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words:白坂ゆり
民家を改装。2Fカフェ
1Fギャラリー 「浜田涼展−焦点距離」(〜12/16)
平面の間に散らした立体の展示が、今までで一番しっくりきた
フォーカスのボケた写真のカラーコピーに、アクリル絵の具。
CDも販売
ライブ「meeting AT OFF SITE」より
撮影:タナベマサエ
伊東篤宏 蛍光管によるサウンドパフォーマンス 1999年
蛍光管のインスタレーション 1999年
伊東篤宏
(Atsuhiro Ito)
1965年 神奈川県生まれ
1992年 多摩美術大学大学院 美術研究科 修了
1998年 サウンドパフォーマンスを行う。以後継続
1999年 CD-R『R・G・B/』を制作。
(発行 : OMEGA POINT)
2000年 東京代々木にフリースペース『OFF SITE』開設
展覧会歴
1987年 発表を始める
1990年 個展/MIX(東京)
TAMA VIVANT 90/渋谷シードホール(東京)
1992年 個展/藍画廊(東京)
1993年 個展/藍画廊(東京)
個展 BORDERLAND ZOO/NICOSギャラリー(東京)
1994年
個展/藍画廊(東京)
個展/プラザギャラリー(東京)
1995年 個展/ルナミ画廊(東京)
1996年 個展/西瓜糖(東京)
個展/ギャラリーK(東京)
個展/プラザギャラリー(東京)
「美」と「術」/藍画廊(東京)
1997年 個展/藍画廊(東京)
ドキュメント376/桐生市(群馬)
1998年 個展 ALTERVISION/東京大学駒場寮(東京)
個展/西瓜糖(東京)
ドキュメント376/桐生市(群馬)
MMAC FESTIVAL IN TOKYO 98/小野画廊(東京)
1999年 it out from PEYOTL/アップリンクファクトリー(東京)
個展/西瓜糖(東京)
個展 slsah/川口現代美術館スタジオ(埼玉)
2000年 個展/ギャルリ伝+Gallery FLOOR 2(東京)
2000-10-20 at 01:44 午後 in アーティスト・ヴォイス | Permalink
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