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2000/09/05

第8回遺作展 斎藤真一「憂愁」展

「せつなさ漂う表情、指先」

art115_02_1「青い草道」1984年 4F 油彩

■斎藤真一さんの作品に初めて接した時、なんてすごい「赤」なんだろうと思った。好きとか嫌いとかそういう次元ではなかった。それは瞽女さんという、盲目の三味線弾きを描いたものだったが、ひたすらもの悲しい表情と、背景の赤い色が気持ちをかきたてた。そして私の中に静かにじわじわと浸透していったのである。

■昨年5月、東京駅駅舎内にある東京ステーションギャラリーで斎藤さんの大々的な展覧会が開催された。同ギャラリーならではの赤煉瓦の壁面のある展示室に、赤い作品がマッチしていて、とても印象に残る展覧会だった。会場出口で涙している観客を何人か見かけ、あやうくもらい泣きをしそうになった覚えがある。

■東北地方を旅して描いた瞽女をはじめ、遊郭吉原の遊女、さすらいのバイオリン弾きなど、斎藤さんが題材にしてきたのは、ある意味で同じような境遇にある人々といっていいだろう。何かを悟りきった彼らに魅力を感じた画家が、愛情をもって描いた作品、そんな気がしてならない。

■長年、斎藤さんの展覧会を行ってきた不忍画廊では、作家亡き後も毎年遺作展を開催してきた。第3回からは「女展」「放浪展」「自画像と旅芸人」「赫展」とテーマを決めて展示している。「斎藤先生の展覧会の時は、本当に全国からお客様がいらっしゃいますね。若い頃に先生の絵画を見たことがあって、という人もいましたし、何か縁を感じて来てくださった方が不思議と多いんです」(不忍画廊 荒井裕史)

■今回は「憂愁」とタイトルされた、まさに斎藤真一芸術のエスプリを堪能できる展覧会。被写 体のせつなげな表情や物語る指先に注目あれ。会場にはタブロー、版画、素描が約25点。今年7月18日、最後の瞽女・杉本シズさんが死去されたが、彼女を描いた1967年の名作「杉本家瞽女 難波コトミ 五十嵐シズ」も、今回追悼の意味を込めて特別 出品されている。

第8回遺作展 斎藤真一「憂愁」展
2000年9月5日(火)〜9月22日(金)
不忍画廊
東京都中央区八重洲1-5-3 不二ビル1F
( 「東京」駅八重洲北口より徒歩2分、地下鉄「日本橋」駅B3出口より徒歩3分 )
11:00〜18:00(土は〜17:00 日祝休)
入場無料
TEL 03-3271-3810

words:斎藤博美

art115_02_2「赤い灯」1986年 銅版画

art115_02_3「筒石の女」銅版画

art115_02_41972年に刊行された豪華本
「越後瞽女日記」45000円

art115_02_5多数並んだポストカード 各100円、7枚500円

art115_02_6展示風景

2000-09-05 at 02:41 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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