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2000/09/09

台北ビエンナーレ2000

「アートとの距離感」 


art116_04_1マイケル・リンが描いたエントランスの床のタイトルはダイレクトに「台北市立美術館 2000年9月9日~2001年1月7日」


■"無法無天 the sky is the limit" というサブタイトルのついた今回の台北ビエンナーレは、フランス人キュレーターのジェローム・サンスと地元キュレーターのマンレイ・シュウとで企画された。20ヶ国近くの国々出身のアーティストが31名参加。どのアーティストも若さの感じられる作品を出していた。いずれも意図を読むというよりは、体感できる作品だったせいか、とてもリラックスして展覧会を楽しむことができた。

■広いエントランスの床に張りめぐらしたマイケル・リンの作品は、フェニックスや花のついたゴージャスな柄がピンクを基調に描かれていて、美術館の建物のもつやや権威的な雰囲気を一笑してしまう。天井には山出淳也のバルーンと、名前の一文字を漢字で書いた紙が浮んでいる。この入口を抜けると展示室との間に廻廊式の廊下があるが、ここでも展示が行なわれていた。これから観にでかける方はすでに、透明アクリルボックスにはいったお金しかみることがないのかもしれないが、初日にはカラフルな色のプラスティック素材などの家庭用品やおもちゃが台のうえに山積みになっていたのだ。「Everything 20NT$」というこのスラシ・クソルウォンの作品は実際に一個20台湾$と交換された。

■アーウィン・ヴルムの作品は、壁や床にマジックペンで描かれたドゥローイングを真似て観ている自分自身が1分間の彫刻になる。部屋のあちこちにボールや自転車、生のバナナまでころがっていて、その近くに小さなドゥローイングがある。展示室を遠めに見渡すとなんなのだろうと不思議に思う。とにかくこんなバカな姿を人に見られたくないというような、そんな滑稽な格好を、それでもやはり試したくなる。

■国旗がパズルになっていて、観客が遊べるM・ギャバという西アフリカのベニンという国の作家など、参加アーティストの出身地もバラエティにとんでいる。しかし、そんな出身地が多様であることも、展覧会を観ている限りではそれほど強く感じることはない。そういう意味では、同世代間の思考にはそれほど隔たりがなくなってきているのだろうか。

■シィアフェイ・チャンの「Hangin' Tough」では、薄暗い部屋に、空き缶や新聞紙、ピザの空き箱などのゴミが床に散乱している。そして、ミラーボールが回転し、正面にはビデオが流れ、ディスコミュージックが絶えまなく流れている。ところどころに置かれた座れるクッション。雑然としたなかで、何故だかそこに座ってほっと出来たのは、私だけではなかったはずだ。善し悪しは別として、作品との距離感が希薄であることの心地よさに、しばし酔いしれていた。

台北ビエンナーレ2000
the sky is the limit 無法無天
2000年9月9日~2001年1月7日
台北市立美術館
月曜休館

words:原久子

art116_04_2エントランスの天井に吊り下がった山出淳也の作品「Over the Rainbow (for Tai pei Biennial」

art116_04_3スラシ・クソルウォン「Everything 20NT$」は屋台の雑貨店のような展示だったが、この数時間後には台のうえはほとんど空になっていた

art116_04_4みんなでお茶を飲みながらリラックスできたナヴィン・ラワンチャイクンの作品「Navin and thr Kids Visit Taipei」

art116_04_5アーウィン・ヴルムの「One Minute Sculpture」

art116_04_6シィアフェイ・チャンの「Hangin' Tough」このカーテンのなかがスゴイんです

2000-09-09 at 03:26 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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