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2000/09/04
サノタカコ展
「内側にあるもの」
「ポール&ジェニファー」左)ポール、右)ジェニファー
■サボテンのような形の布のオブジェが仲良く2つ並んでいる。縫い目からは緑色の芝のようなものがのぞいていて、ひとつはびっしりと茶色い点々があるので、サボテンを表裏にひっくり返したようにも見える。縫い込まれてしまった内側の世界をいろいろと想像する。向かい合った壁から床にかけて、楕円形のオブジェが入った木製の蓋付きの箱がある。
■サボテンみたいなオブジェをみていると、点々のあるほうを持ち上げて「ほらこうやったら音もするんですよ」と横にいた作家のサノさんが教えてくれた。持ち上げて横に倒してから起こすと、「メェ~」と羊の泣き声が聞こえる。なるほど、芝生に羊という取り合わせかと、すっかりわかったような気分になったが。この鳴き声はドイツのシュタイフ社製のテディ・ベアと同じことに気付いた。はて?羊と小熊は同じ鳴き声なのか?サノさんもどうやら疑問に思っていたらしい。無地のほうも音がする。これは赤ちゃんのおもちゃのガラガラの音。
■羊のほうがジェニファーで、無地のほうがポールという名なのだという。はじめて出合ったばかりで、特別の愛着は未だない者にとって何故そのような名がつくのか、しっくりしない。だが、きっと、名前などそんなものなのだろう。点々は牛の模様、「牛」の名前というと「ジェニファー」とサノさんのなかでは決まっているのだそうだ。
■楕円形の種のようなオブジェは、ひとつひとつ表情が違う。縫い目から綿毛がふわふわ出ていたり、白い毛が生えているものがあったり。いずれも生命をすでに育んでいるかのように、あるいは少しずつ変化していっているかのように見える。そして、箱は「棺」のイメージも重ね合わせている。生きることも死ぬことも一つのこと。作品には自分自身の不安な気持ちや、どこかに逃げてしまいたい、といった気持ちも含まれているのだとか。
■紙や布を素材にし、以前はもっとカラフルな色の作品をつくっていたのだそうだ。この個展をみていると、そのカラフルな作品がイメージできない。彼女のなかではさほど大きくは変わっていないという認識のようだ。堅いものや柔らかいもの、暖かいものや、ひんやり冷たいもの、そんな皮膚感覚を大事にした作品を以前もつくっていただろうし、これからもつくっていくのだろう。
サノタカコ展
2000年9月4日(月)~16日(土)
信濃橋画廊apron
大阪市西区西本町1-3-4 陶磁器会館
11:00-19:00(土曜日-17:00)
TEL.06-6532-4395
ジェニファーの表面の点、これは布を焦がしてつけた色だ
「behind」
毛がはえている種子
これは斑点がある種子
2000-09-04 at 02:58 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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