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2000/09/23
千住路上アート展“結(ゆい)”2000
「結んで開いて」
元紙問屋、横山家の蔵。かつては内蔵1つ、外蔵2つあったが、現在は明治9年の外蔵が残る。
■芸大上野校に「アトリエ507」という部屋がある。油画科の学生が中心となって、アトリエと発表・交流の場として公開している。その彼らが、他学生や社会人も交え、東京の下町・北千住の路上で美術展を開いていたので、秋晴れの日に出かけてみた。
■北千住は、江戸時代に宿場町として栄え、商店街や住宅地の中に今も50棟以上の蔵が残る。開発された駅前から商店街を一歩入ると、その左右には猫道といわれる狭い路地が多い。長唄を練習する声が聞こえたり、狭い道を自転車で器用に配達する郵便屋さんの姿など、下町風情が残る。一方で、北千住発の電車がかつてサリン事件に巻き込まれたことも思い出した。
■「トミパーマ」という築80年(空襲をまぬがれた)の美容室にも展示があったが、3代目女主人が町や作品の感想について話してくれた。町の人が語り手になってくれるのは成果のひとつ。不動産屋が空き家を融通してくれたり、企画者の大倉いずほや数人の作家がコミュニケーションのもとにプロジェクトを進めたことがわかる。
■それでも作品撤去はあった。商店街の数ヶ所に置かれていたゴジラのような架空の動物のオブジェが、お客に気味悪がられて。でも、人の心を波立たせる作品はあったほうがいいとは思う。結果はどうあれ、作家が、お店のご主人に制作のイメージや気持ちを伝えていくといいな、と思った。
■横谷奈歩の歴史ある銭湯での作品は、ドアに「本日のキャスト 老人その1、子供連れの女…」などと書かれた白い紙と、作品を見つけてもらうよう促す紙が貼られているだけだった。空間を前に、見えないものに気づかせる装置を仕掛けたようだ。私は風呂に入り、子供連れのおばあさんと話をしたり、瓶ジュースを飲んでいた。出るときに、ここは劇場で、日々もそんなものだな、と客観的に思った。
■ご主人夫婦は最初展示がないと勘違いしたらしく、彼女が制作の動機を伝えにいった。ご主人は「ロッカーを新しくしてもすぐ気づく客もいれば気づかない客もいるから」といいながら、横谷の装置がそのロッカーと同じだということに気づいてきた。この空間に交錯する時間や記憶を、番台の舞台監督は誰よりも見ている。全体的には甘さがかいま見えるが、小さなエリアだからこそ、作家と地域住民が、作品を介して影響し合えるプロジェクトに成長していってほしいと思った。
千住路上アート展“結(ゆい)”2000
2000年9月23日(土)〜10月1日(日)
千住3・4丁目界隈
(JR・地下鉄北千住駅西口広場より徒歩5分。商店街右手、美容室「花椿」2Fでマップ配付)
11:00-19:00 無休
※横谷奈歩の作品を見る際にはタオルと入浴料400円要
お問い合わせ [email protected]
words:白坂ゆり
板垣賢司 白いトタン塀の水道管が紫の布で巻かれ、白い花が咲いている
安福真紀子 菓子店のウインドー。缶の裏にヘビの文様が描かれている。
大森康一 小学校の塀の上にポジフィルムの箱が並び、ゆっくり点灯。身近な人のセーターの一部分などが映っている。
馬場美樹 空き家の一部屋に御簾の部屋。机には手製の本
永治晃子 階段を上がるとバケツに地球が映っている?
井上美奈 銭湯「千代の湯」の玄関。ゲタ箱から着想した数字の札が並ぶ。中では横谷奈歩の作品。のれんも新調した。外には、栗原崇作、記念撮影用の顔出し看板もあり。
2000-09-23 at 03:07 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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