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2000/08/11
Vol.23 斎藤浩一
「老若男女を問わず、 とにかく楽しませたいんだよね 」
高校1年生から16年間、自主映画をつくり続け、自ら自主映画イベントを主宰。斎藤浩一さんはもはや「自主映画界の雄」といっても過言ではないだろう。自主映画というとマニアックで暗いイメージがよぎるが、根っからのエンターテイナーである彼は「おバカ」であることにこだわり、持ち前のサービス精神で観客を楽しませてやまない。このサービス精神こそアートの神髄!? ついに今月、豊島公会堂(東京・豊島区)で上映会を決行。パワフルな斎藤さんに密着取材した。
自主映画へのめり込んだワケは?
■高校に8ミリ映画同好会というクラブがあって、先輩たちの映画上映会に行ったら、めちゃくちゃウケて面 白いなって思ってその場で入会を決めた。「葛飾戦隊EFC」という学園を舞台にした戦隊もので、演技もアクションもなっちゃないんだけど、何が面 白かったかっていうと、指令長官が学校の教師だったりしてやる気のなさが画面 にあふれてたこと(笑)。校風として自由奔放な学校だったのでやりたい放題できたんだよね。それから先輩たちの作品を見よう見まねで撮影したのが「グロイゾーX〜哀愁のさゆりちゃん」。怪奇ものだったから、夜、学校に侵入して撮ったりしたよ。僕自身の出演作は2作目以降。芝居とか映画でよく「役作り」っていうけど、正直、自分にはわからないんだよね。役になりきる意識をしたことはない。それよりも自分の意識を飛ばすことに集中している。こうした方が面 白いだろうなとかいうのは、僕的にはなりきるんじゃなくて、やっぱり意識を飛ばすこと。だから結果 的には思いっきり変な役の方がやりやすいんだよね。等身大の役はある意味やりやすいけどつまらない。
どんな経緯で「バカ映画」にハマッたの?
■1960〜70年代に、湯水のごとくつくられていたプログラムピクチャーズというバカ映画を見ていた。ずいぶん影響も受けたよね。若大将シリーズも自分にいわせればバカ系映画。バカ映画には、意図してバカをやっているものと天然のものとがある。天然の場合は始末におえなくて、なんでここでこういう展開になるのかという展開についてのバカさとか役者そのもののバカさとか。チョイ役で出てる意味がない役者とか意味ないしぐさとか、気づく人だけが気づく演出や、非常に自虐的で百人にひとりがわかってくれればいいや、みたいな投げっぱなしとか。そういった要素があるとたまらなく愛おしくなるよね。バカとダメの違いはとても大きいんだよ。例えば平成版ゴジラはダメ映画。ダメという敬称はお客さんのことを考えていないやる気のない状態がミエミエになっちゃう。昔のゴジラは少なくともバカ映画だった。やることが明確だったし。もう「キングコングvsゴジラ」なんかはただのプロレスだね。どういう試合の流れにしてどういうオチにするのか考えている。ハイテク使えばあっさり解決することをあえてローテクでやったりね。無駄 な努力をしていて、それをバカやってるなってげらげら笑える作品というのが僕にとっては最高で、つまり愛しているわけね。
主宰する「シネマ秘宝館」について
■昔、ロフトプラスワンというトークライブ居酒屋で常連さんたちが結成した「風」という集まりがあって、面 白そうだなと思って自分も参加していた。映像班でトークビデオを撮ったりしていたんだけど、そろそろ斎藤くんもイベントやれば、と言われて、自分がやるとしたら自主映画上映会かなと。その頃、横浜方面 で自主映画上映会が活発に開催されていて、僕も出品したりしてた。そこで他の作家さんと知り合いになって、そのコネクションから作品を集めて立ち上げた。自主映画上映会というのはたいしてお客さんが集まらないのが常で、どんな上映会でもいきなり暗くなって始まっちゃう味気ないものだった。だからそうじゃなくて、作品そのものをボケ役にして僕がつっこむという掛け合い漫才みたいなものをやりたいなと思ったのね。上映会をより盛り上げるために、3部に分けて、徐々にテンションを上げていくような構成にするとか、回を重ねるうちにイベントの盛りあげ方が見えてきたよね。スターウォーズの公開記念には「手づくりのスターウォーズ」を流したし、今度の上映会(8/19〜20)では衆議院議員当選を記念して小渕優子さん出演の自主映画「シューベルト」(佐藤懐智監督 1990年)をラインナップしてる。シネマ秘宝館をスタートしたときに自分の中で決めていたのは定期上映。他の上映会に対するアンチテーゼのうちのひとつなんだけど、定期的にやっている上映会がなかったから、どんなにその時の集客が多くても、出品監督さんの最新作を見るチャンスがないんだよね。それってもったいないなと思って。だから定期開催にすれば、いろいろなつながりができるしファンも徐々についてくると考えたのね。
監督として活動を教えて!
■映画をつくる時は、面白そうなネタを見つけてシナリオを書いてみて、役者はどーするかとか細かいところに入るわけだけど、僕の場合は、自分が見に行った劇団やライブで面 白い人を見つけたらすぐにその場でくどきにかかる。もちろん必ずしも全員がOKということではないんだけど、交渉によって人間同士のつながりができるし、とんでもないところで違う人を紹介してもらったり、想像もつかないくらい広がっていくよね。例えば、もうすぐクランクインする「四谷の青大将」(仮題)にしたって、以前なら考えられないくらいなことをしてる。例えば、四谷の商店街を巻き込んで撮影することもそうだし、ビートたけしの映画に出ていた役者さんをノーギャラで頼んだりとか。ボランティアを相手に納得してやってもらうには満足度しかないわけ。この作品に出て良かったとか、現場の雰囲気が面 白かったとか、そういったものだけなんだよね。それはいつも気にしているね。だから監督として動いているわけだけど、それ以上にプロデューサー的な考えの方が大きいんだよね。例えば1泊2日で撮影合宿をしようとした時にまず魚の美味しい安い場所を探すとかね。まあ内輪のスタッフは完成作に対してそれなりにいろんな思い入れがあるわけだけど、でも重要なのは第三者であるお客さんが見てどう感じるかということ。ウケて喜んでもらえたらいいんだけどね。
主催イベントと映画製作、どちらに重きを置いているの?
■自分がやったことに対して老若男女を問わず、とにかく楽しませたいんだよね。だから、上映イベントや映画製作は楽しませるための手段であって、結局それは何でもいいの。小室哲也プロデュースじゃないけど、僕がやったことに対して「ああ面 白かった」と思えるものであれば手段は問わないってこと。だから去年まで、かつしかFMでラジオのパーソナリティやったりして、これしかないというわけじゃないんだよね。いろいろなことをやっていく中で、関わった人が面 白いと思ってくれる、これが一番重要なの。チンチン電車貸し切りで音楽ライブとか、砂浜でスクリーンを設営して上映会やるとか、やりたいアイデアはいろいろあるけど、どれも不可能な気がしないというか、やれそうだね。そのためには、思いついたことを実行する際にどれだけ周囲に動いてくれる人がいるかが大事なわけだけど。今年の12月には中野芸能小劇場(東京・中野区)で「シネマ秘宝館芸能祭」を企画している。映画上映にアトラクションをかましてそれを芸能っぽく演出する予定。誰もやっていないんだけど、やったらたぶん面白いというような展開にしたいね。
今後の予定
「シネマ秘宝館in豊島公会堂」
2000年8月19日(土)〜20日(日)
会場:豊島公会堂(JR池袋東口より徒歩5分)
時間:13:30開場 14:00開演 終了は20:00〜20:30を予定
料金:前売1300円、当日1500円、 2日間通し前売2500円 (2日間来場者には8ミリフィルム付き携帯ストラップをプレゼント) 前売券はチケットぴあで発売中
問合せ:シネマ秘宝館/斎藤 TEL 070-5731-8429 [email protected] http://www.intership.ne.jp/~mycult
words:斎藤博美
「グロイゾーX〜哀愁のさゆりちゃん」1983年 処女監督作品
「ジェンカ」1997年 銀座の雑居ビル屋上に侵入して撮影した短編
「ジェンカ」1997年 銀座の雑居ビル屋上に侵入して撮影した短編
「フルチンコップ」1999年 内容は想像できると思いますが…
斎藤浩一(Koichi Saito)
(自主映画上映イベント主宰・娯楽映像作家)
1968年 東京生まれ
1996年8月〜 自主映画上映会「シネマ秘宝館」主宰。以後年3回の定期開催
1998年7月
〜1999年6月 かつしかFM「ラジオ秘宝館」パーソナリティ
最近の活動歴
2000年2月 バカンヌ映画祭(中野ZERO視聴覚ホール)
2000年4月 シネマ秘宝館13(新宿ロフトプラスワン)
2000-08-11 at 02:37 午後 in アーティスト・ヴォイス | Permalink