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2000/08/05

六甲アイランド現代アート野外展

「潮風とともに去りぬ」


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「風の周行」(福井恵子作品)、12本のフラッグが中心のポールを取り囲む。太陽の動きとともに中心のポールが日時計の針の役目をはたす。

■ 「六甲アイランド野外現代アート展」は震災があった95年を除いて毎年8月に六甲アイランド(埋立て地)の南の海辺の遊歩道で催されてきた。7回目の今回も17組のアーティストが出品した。会期中は連日好天に恵まれ、灼熱の太陽の下、潮風を受けながらさまざまな作品と出会う場ができた。

■ 特別なテーマが設けられているわけではないので、それぞれが思い思いに作品を設置している。最寄のモノレールの駅から海に向かって歩くと、目印のように「風の周行」(福井恵子作品)が風にたなびくのが見えてくる。一駅隣の神戸ファッション美術館から歩いても10分ほどの距離だ。

■やや年輩の写真愛好家のグループの人たちが、こぞってシャッターを押していた被写体は國府理の「自動車堂」だった。國府はクルマを使った作品を毎回出品している。今回は2台の乗用車が天に向かってまっすぐ凛として立っている。写真を撮りたくなるってことは、みなさん魅力を感じているってことだ。

■受付でもらったリーフレットの作品配置図にある岡本光博の「おくだけ」を探すが、見つからない。この作品は貝殻型の市販の芳香剤「ブルーレットおくだけ」を海辺の木板の床に簡単に固定して置くだけの作品だと解説があるが。どうやら見学者に踏みつけられたのか、持ち去られたのか影も形もなくなっていた。

■違和感なく、どの作品も周囲と調和がとれている。犬を連れて散歩をする人、岸壁から釣り糸を垂れる人など、いろんな人が行き交う。近隣の人たちも全く無視するわけでもなく、恒例となった野外展に好意的に接しているようだった。わざわざ展覧会を見に来たという人よりは、散歩やバーベキューをしに来ている人などが圧倒的に多い。それでも、作品の近くまで来るとキャプションに目をやりタイトルを見ていく人の姿をそこここに見る。

■青い空に大きな海、背後には六甲山系がある。人工的な設計の埋立て地ではあるが、いろんなものが混ざり合って、この街の文化をつくってゆくのだろうか。8月の最後の日曜、太陽はじりじりと照りつけているが、吹く風は心無しか秋を運んで来ているようにも感じられた。作品が撤去されるともう9月だ。来年は出品者にソーラーパネルが事前に配られ、このパネルを使用した作品がつくられるという。

六甲アイランド現代アート野外展
2000年8月5日(土)~27日(日)
六甲アイランド・マリンパーク


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六甲アイランド現代アート野外展の会場全景

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「月読」(坪田昌之作品) キックボードに乗った子どもが作品の下をくぐって行った。

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「自動車堂」(國府理作品) 両手を合わせているようにも見える。

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「風景の肖像 2000.08」(中川周士作品) 以前、画廊での中川周士の個展で会ったとき、真ん中に穴の空いたオブジェのひとつひとつが細胞のようでもあり、それら並ぶことで膜のようなものをつくりだす、というような話しをしたことを思い出した。

2000-08-05 at 02:16 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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