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2000/07/17
黄鋭 架空の旅・IV―最後の晩餐
「女性でなければならない理由」
府庁新別館前広場、支柱が女性に例えられ帯を絞められている
■大阪府庁の新別館前の広場の支柱には、いまキモノの帯、帯絞めなどが絞められている。パスポートセンターが館内にあるので、一般 の利用も多いこの建物のまえで、しばし、通行人の反応をみているとさまざまだ。まるで、何も見えないかのように足早に通 りすぎてゆく人。笑いながら「これなんやろ~」と首をかしげる女性の二人連れなど。
■広場から2階に通じる階段には4体のマネキンにキモノが着せ付けられている。縄が身体にかけられていて、女性を縛り付けるさまざまな因習などを比喩したものだろうとはわかっても、そしてマネキンとはわかっていても、かなりセクシーなので出勤途中の府庁職員の方には朝からややヘビーかもしれない。撮影した7月17日にはまだ展示していたのだが、残念ながら「安全性に問題がある」という理由(公式発表)で作品は会期を待たずに19日に撤去された。
■パフォーマンスがはじまる展覧会初日の午後6時には、かなりの観衆が集まっていた。23才から32才までの4人の女性を自宅で撮った等身大の白黒のポートレイトが飾られた展示室。白と赤のテーブルクロスがかかった食卓に写 真の4人が写真のままの衣服で登場した。まず、シャンパンがグラスに注がれ、フレンチのフルコースのディナーがはじまった。もてなすのは作家の黄鋭氏。
■4人がコーヒーを飲み終えたころ、さっと黒い幕がひかれ、幕がとられると、ガラス窓の向こうに浴衣に着替えた女性たちが立っていた。食事のときに着ていたものが、下着や靴まで、それぞれが座っていた椅子に掛けられている。約1時間半のパフォーマンスは終了した。とても素敵な演出だったと思う。食べ残したデザートや、飲みかけのワイングラスも、すべてこのままインスタレーションとして約2週間展示される。
■この展覧会の作家のコンセプトに、設定された三次元の展示空間のなかを「会期中、観客が参与する時間」「テーマによって過去やほかの時空を自在に浮遊する」ということが記されている。そして、「視覚をうながすもの」「人間の感覚器官/機能のはたらきをうながすもの」ということがある。日本人女性は身体に気をつかい、どのように着飾るか、時代的・社会的風潮をいかに反映しているかに、非常に敏感である、と書かれている。確かに、相対的にみれば、そうかもしれない。「なぜ、女性なのか」という疑問をここで発するほうがおかしいのだろうか。「女性は大地に属する」という『易経』に出てくるコトバも展覧会のチラシに紹介されている。
■黄さんは女性を取り巻くさまざまな問題を作品のなかで提起しようとした。だが思うに、近頃、特に都市部に住む女性は、むしろ男性よりハツラツとしているように思う。身体に気をつかい、身繕いを気にかける男性も、そして、男性として社会で生きることの呪縛に悩む男性も増えてきているような気がしてならない。とはいえ、男性はなかなか絵にならないのだろうか。
黄鋭 (ホワン・ルイ) 架空の旅・ IV
―最後の晩餐
2000年7月17日(月)~29日(土)
大阪府立現代美術センター
大阪市中央区大手町3-1-43 大阪府庁新別館内
10:00~18:00(土10:00~16:00)
日曜休館
TEL 06-4790-8520)
布で顔を覆った和服姿のマネキンをちらちら振り返る府庁に来た人
いよいよパフォーマンスがはじまる
たくさんの人が見守るなか、ディナーはすすんでいく
浴衣に着替えた女性たちが並んで立っている
どうして絵画的なのか、やはり会場で見ないとわからないかもしれない。
女性が去った後に、それぞれが残していったものがあった
2000-07-17 at 11:35 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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