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2000/07/20

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2000展

「迷ったら自然に聞くこと」


art113_01_1磯辺行久「川はどこにいった」(中里) 
全長3.5km、約600本の杭を立て、信濃川の蛇行を再現。現在の川はダム建設で流路を変えられ、水量 を減らされ、魚介類が住めなくなっている。

■新潟県越後妻有(つまり)と呼ばれる地域で、いま「大地の芸術祭」が行われている。十日町、中里村など6市町村約762平方kmに渡り、32カ国142作家が、棚田や川、山や湖などの自然や町を舞台に巨大作品を展開したり、地域の人と共に制作したり、スケールの大きい作品が点在している。

■この地域は豪雪地で、高齢化と過疎化の問題を抱えている。絹織物産業も衰退し、米どころでもあるが、若年労働力が都市へ流れ、産業が立ち行かなくなっている。この芸術祭は、新潟県知事が提唱した「里創プラン」という地域おこしの一環だ。アーティストの視点で、縄文時代の豊かな自然や農耕文化など、地域の宝物を掘り起こすことからはじめようとするものだ。

■たとえば、アートには「場の声を聞く、場を生かす」発想がある。とってつけたような都会的な建築のセンターが建ってもいずれ人は寄りつかなくなるだろう。しかし、坂口寛敏やCLIPらのように、その場を生かした作品としての広場や駐車場を、公共事業として地域の人と協働で制作すれば、その後の守られ方も変わるはずだ。シモン・ビールは三等身の雪だるまを子どもたちと一緒につくり、いま、6市町村が家族のようにつながることを表す6体が、冷蔵庫に入って展示されている。いずれ雪は溶けるが、その記憶は、子どもたちが成長したときになにかを考えさせるだろう。

■こうした理想論が地元の人に本当に有益か悩みもするが、目先の利潤より、少し遠い先の希望を信じる世の中を切実に願う。万博に象徴される、工業を中心とした近代社会への夢にあふれた世紀は破綻に終わろうとしている。21世紀は、「アジア」「自然と共生する農耕文化」の出番かな。地球はいつまでもつかな? 生きるためのアートが知りたいと、里山を見て思った。

■この芸術祭は、「こへび隊」という学生を中心としたボランティアスタッフが、現場の運営を担っている。寒い冬から、1軒ずつ説明して回ったという。私も6月からわずかながら「こへび隊」で活動している。内から外から見ると、彼らの姿が実は一番興味深い。農業や都市計画を学ぶ人、「アートはよくわからないけど」という人もいる。回るのが大変な広さだが、思わず笑う作品もあるし、1、2泊して足を運んでくれるとうれしい。

「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2000」
2000年7月20日(木)〜9月10日(日)
新潟県十日町、中里村、津南町、松之山町、松代町、川西町 (上越新幹線越後湯沢駅乗り換え、ほくほく線十日町駅ほか)
無休
共通パス一般1700円、大学生・シルバー1200円、小中高700円
(JRびゅうプラザ、チケットぴあ、CNプレイガイドでも発売)
地域間はシャトルバスも運行。一般・大高中2000円、子ども1000円
TEL.新潟県事務局0257-57-2637 
  東京事務局03-3476-4360

※関連WEB
http://www2.ocn.ne.jp/~mimi/
(観見<みみ>の風の便り。地元からの発信) http://www.superchannel.org/ (デンマークのアーティスト、スーパーフレックスが地元の人をゲストに番組を作成)

words:白坂ゆり

art113_01_2ジャウマ・プレンサ「鳥たちの家」。足元にはジャン=フランソワ・ブラン「ブルーミング・スパイラル」地元の人と山に登り、山の植物を16のますのなかに植えた。(中里)
植物を用いた作品では、リュイス・サンスの鉄の「ヒガンバナ」も印象深い(十日町)

art113_01_3リチャード・ウィルソン「日本に向けて北を定めよ(74°33'2")」(中里)自宅の実物大の構造をロンドンの緯度と経度を基準に移動。地が3階で天が1階にあたる。学校前に建てたのは、子どもたちに広い視点を感じてほしいから

art113_01_4北山善夫「死者へ、生者へ」(中里)
廃校になった小学校全体が作品。行事写真や子どもたちの絵とともに、死亡記事から作家が描いたドローイングなども貼られている。建物からは竹と紙片でつくられた羽が生えている

art113_01_5イリヤ&エミリア・カバコフ「米の実る里山の5つの彫刻」(松代)稲作の場面を表した棚田の彫刻を、ステージのテキスト越しに眺める。このステージを中心に、雪国農耕文化センターを建設

art113_01_6國安孝昌「棚守る竜神の御座」(松代)
レンガ状の陶ブロックと丸太を積み重ねた。シルバーの人々と約1カ月共に制作

art113_01_7ジェームズ・タレル「光の館」(川西町)
伝統建築を再現した宿泊施設。屋根がスライドし、刻々と変化する“抽象画”のような空を、畳に寝転がって見ることができる(写 真)。光がすくえる風呂もある。松之山のマリーナ・アブラモヴィッチの「夢の家」も宿泊できる作品

2000-07-20 at 01:07 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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