2000/05/30
Vol.20 オメオリケイジ(Keiji Omeori)
ひたすら「喜劇」に徹して、アクの強い芝居を展開している劇団がある。その名は劇団「ズーズーC」。はじめて見たのは1997年12月の第16回公演だが、とにかくドタバタとした印象だった。毎回足を運ぶごとに、彼らの身体からにじみでてくる役者魂に圧倒され、ほんとに馬鹿馬鹿しいストーリーを、これでもか!と引っ張り続けるこの劇団にすっかりハマった。「ズーズーC」の看板役者であり、作・演出を担当するオメオリケイジさんに直撃!
●そもそも喜劇をはじめたきっかけは?
■原健太郎という喜劇の研究家的な存在の人がいて、「ズーズーC」という劇団をやっていたのですが、彼の影響で喜劇をやりたいって思うようになりました。僕は22歳で上京してきて、何だかわからないけど、芝居でもやってみようかな、というくらいの動機でこの世界に入った。そこで考えたのが、大きい劇団のオーデションに受かっても、諸先輩たちが多々いるからしょーもない、ならいずれ自分で旗揚げして自分の劇団で売れた方がいいなって。それでとりあえず最初に中堅の劇団に入ったんですけど、肌が合わなくて1年半やって退団。次に気軽な気持ちで入ったのが「ズーズーC」だったんです。それまで特に喜劇にこだわってなかったんですけど、笑いにまっこうから取り組んでいる原さんにすっかり洗脳されました。「もっと笑いをまじめに考えようよ」という環境で演っていたので、もう喜劇しかないなと思うようになりました。
●第18回公演から「井戸端喜劇」とうたっていますが、どういう意味ですか?
■役者のキャラクターのぶつかり合いから出てくる展開をして、なるだけストーリーを進めないのが特徴です。できれば1幕2時間の芝居をリアルタイムに2時間の話にしたい。極論をいってしまえば、例えばですが、ビールがなぜ美味しいか、そのビールをどうやって飲むのか、だけを2時間の芝居にしたいという感じですね。アンケートには時々「芝居が長い」「しつこい」といった意見もありますが、「じゃあ次回は短くしよう」ではなく、「面白くなかったから長い」と感じたことを逆手に取り、面白さを伝えられる技術があれば、皆が芝居に引き込まれて笑ってくれると思うんです。そうならないのは芝居が下手くそだからってことでしょ? 僕の中には人とちょっとずれた笑いの世界があると思うんですけど、それをお客さんに分からせてあげて、笑わせていくら、だと思ってる。
●オメオリさんが考える「喜劇の定義」を教えてください。
■どのように見せたら笑えるか、という視点で、テーマに対し一番大笑いできる部分をストーリーの最後にもってくる。すべてのプロセスはそこに向かって進んで行き、最後に大笑いとなれば喜劇が成り立つと思ってます。方法としては、終盤の部分をどうもっていくかだけを考えて、そこからさかのぼって脚本を書いていけば、いわゆるケツ墜ち勝負の喜劇というのはそんなに難しくないと思ってるんです。でも失敗すると、今まで見てきたのは何だったんだになっちゃうんです。ケツの笑いはハイレベルで単純に馬鹿笑いできるものにしないとね。第19回公演『ギロチン』だと役者の動きで大笑いしてもらった。こうして何年もやっていけば、「笑いを含んだ普通の芝居」と「喜劇」の区別がちゃんとつくようになると思うんです。
●それにしても、ひとつのセリフが長いですよね。よく覚えられるなって……
■もともと書き過ぎなんです(笑)。でもって公演時間がそれほど長くないから必然的に早口になっちゃう。でもセリフは削れない。あえてまわりくどく説明したり、馬鹿馬鹿しく複雑にすることで面白さを出したいから。だから必要以上に形容詞が多いんですね。掛け合いの面白さをお客さんにわかってもらいたい、という気持ちがセリフを長くさせてしまうんです。
●料金1000円にこだわるのはなぜ?
■小劇団のうちは映画よりも高い料金を取ってはいけない、という信念からです。大きい劇場で著名な人が出演している芝居の場合は、著名人が生で見られる喜びもあるし、セットもそれなりに素晴らしいから高くても見る側の満足感はあるでしょうけど、小劇団でチケット代2000~3000円徴収できるのは、一般の人がほとんど入っていないから成り立っているんだと。客はほとんど知り合い関係なんですよね。でも僕らはそれじゃイヤなんです。どこも1公演につき劇団員ひとりあたり10万円くらいは出費していると思うんですよ。するとノルマはチケット代が1000円だと100枚、2000円だと50枚、3000円だと33枚という計算になる。料金を上げてその分見栄えのいいチラシをつくろうよ、という話もでたりする。でも現状は値段と内容が伴ってないから、一般客は少ないじゃないですか。うちの劇団は公演前に路上でタダ券を配ったりしているんです。20人に配って1人くらいは来てくれる。そうやって、まず一般客に見てもらう土壌を作りたいと思っています。それを考えると1000円は動かせないなって。
●次回公演のPRをどうぞ!
■いくつかの劇団で30分の芝居をノンストップで上演する「休む暇無し」というイベントを昨年からやってます。僕らの上演する『踏み絵』は、前述した喜劇の定義をまさに再現できていると思います。作者がテーマをどうとらえたのか、というのが結構重要なわけですが、それがはっきりわかる内容だと思いますので、誰がどこでどんなくだらないことを言うのか、とにかく期待していてください。
今後の予定
第21回公演「喜劇 日本最初の天気予報」
2000年6月12日~18日
会場:ミニホール新宿Fu
料金:前売1000円、当日1200円
問合せ:劇団ズーズーC事務所 TEL.03-3530-7642
休む暇無し其の弐「喜劇 踏み絵」(仮)
2000年8月25日~27日
会場:ミニホール新宿Fu
料金:前売1000円、当日1200円
問合せ:劇団ズーズーC事務所 TEL.03-3530-7642
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words:斎藤博美
第19回公演「ギロチン」
上演後、新宿・歌舞伎町を舞台に行っている「役者捜しクイズ」風景
稽古風景
これが喜劇の醍醐味を見せる「踏み絵」のシナリオだ
かつて、こんな路上パフォーマンスをやっていた!
1997年公演の「爆天男女」シリーズ
ついに完成した発売用台本
オメオリケイジ
(Keiji Omeori)
1969年 大阪生まれ
1991年 上京して芝居をはじめる
1992年 劇団ズーズーCに入団
最近の公演歴
1998年6月 第17回公演「昔話」
(ミニホール新宿Fu)
1998年11月 第18回公演
「地球は丸いと言い出した男」
(ミニホール新宿Fu)
1999年6月 第19回公演「ギロチン」 (ミニホール新宿Fu)
1999年8月 新宿演劇祭り「休む暇無し」 (ミニホール新宿Fu)
1999年11月 第20回公演「喜劇 明治8年名字必称令」(ミニホール新宿Fu)
2000-05-30 at 08:59 午前 in アーティスト・ヴォイス | Permalink
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