« 言及する振動 | メイン | 旅籠町町家プロジェクト »
2000/05/12
中川佳宣展 ―farmer's pot―
「壷の中身は?」
展覧会が行なわれている会場の外から半透明の外壁を通してみえる壷
■「farmer's pot」というタイトルは直訳すると“農夫の壷”とでも云うだろうか。左右対称の壷型のドゥローイング、版画、テラコッタの壷が並ぶ。ドゥローイングも版画も、壷型そのものと、そのかたちをくり抜いた外側が隣り合わせて対をなしている。中川さんにとって、「地」と「図」の関係を探るうちに、壷と壷が取り出されたあと、という構図ができあがったようだ。
■作品名に、耳慣れないアルファベットで記されている。これは植物の学名ということだ。版画のポートフォリオとテラコッタの壷のマルティプルの組み合わせには、稲の原作物の名称をタイトルにしている。壷のなかに、なにが入っているのか気になる。口のところが皮革などで閉じられ、封印されているような様子で静かに置かれている。見えないものは、見たくなったり、気になったり、想像がふくらんだりするものだ。
■植物事典をめくっていると、同じ科にどういった種類がどのくらいあるのかが記載されている。どこが原産地で、どんな経路でその土地に根付くことになったか等。中川さんは、種類の数によってエディション数を決定する。また、タネの旅の足跡を思いえがいたりしながら、作品をつくりだしていくという。人は表面しかみえない壷の内側(中身)を想像する。壷の表面によって覆い隠されたものを。なぜモティーフに壷を選んだのかは、平面上のドゥローイングや版画も、壷という表面(かたち)によって、さまざまな中身を想像させるきっかけ(媒体)だから、ということだったのか。
■壷を描きだしたドゥローイングが、版画工房の壁にも展示されていた。数に圧倒される。なぜ、壷なのだろうかと、ずっと不思議だった。でも、自分なりにいろいろ想像していた。作者である中川さんから説明を聞いたあとも、中身をいろいろと想像していた。
中川佳宣展 ―farmer's pot―
2000年5月12日(金)~6月15日(木)
ノマルエディション/プロジェクト・スペース http://www.nomart.co.jo
大阪市城東区永田3-5-22
11:00~19:00(土/14:00~19:00)
日祝休廊
TEL.06-6967-1354
*6月3日(土)16:00~「作家と語る」
words:原久子
「farmer's pot - Oryza.sativa L」(2000)
会場風景:版画と壷とはひとつの作品として展示されている
「farmer's pot - Tiriticum L」(2000)
9枚のドゥローイングと壷
9枚のうちの一枚
「farmer's pot Sesamum L」(2000)
セサミ(ごま)というタイトルのついた作品
版画工房の内部の壁にも沢山のドゥローイングが展示されている
2000-05-12 at 08:54 午後 in 展覧会レポート | Permalink
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a014e885bb6e5970d01538ef40b2b970b
Listed below are links to weblogs that reference 中川佳宣展 ―farmer's pot―: