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2000/02/12

荒関善郁展

「特撮ヒーローのいる心象風景

art102_2-01「ジンライム」


■私は何事にも先入観がついてまわるタイプの人間だ(と前回と同じフレーズで始まるのには訳が…)。DMに印刷されていた1枚の作品に惹かれて、町田市南成瀬のギャラリーを訪れた。それはウルトラマンと怪獣らしきモチーフを描いたものだった。何を隠そう、私は特撮ヒーローが大好き。どんな作品だか見てみたい一心で、会場に向かった。

■なるせ美術座。不思議な響きだが、画廊のネーミングである。そこで荒関善郁展は開催されていた。ゆったりした空間に作品が並んでいるのだが、予想に反して抽象的なものだった。ビビッド色のクネクネした線と面が絡み合って画面をつくっている。怪獣に見えなくもないが、例のDMの作品は無かったし、タイプ的にも違うものだった。

■奥の第2展示室に行くと、ありました、ありました。ウルトラ系の絵画が。作家の荒関さんがちょうど会場にいて、話を聞くことができた。抽象画からはじまり→自分の人体を描いていたが→徐々に肉体をウルトラマンにデフォルメした絵に発展し→ウルトラマン像を描くようになっていった、という。しかし「ヒーロー像は絵を描くことと自分がやりたいことの触媒でしかない」ときっぱり。

■私が興味を持ったのは、制作の過程だ。ガチャポン(お金を入れてノブを回すとカプセル入りのオモチャが出てくるマシン)でゲットしたウルトラマンや怪獣人形を並べて写真に撮り、それを描いているそうだが、人形達の並べ方で人間の関係性を示しているという。そういえば単なる戦いのシーンとはちょっと違うぞ。互いに背を向け合ったり、見えない敵を威嚇していたり、ともかく画面上の怪獣はウルトラマンの敵ではないらしい。自分勝手なストーリーで読み解いていけそうで面白い。

■再び、溶けだした宇宙人のような絵画が並ぶ第1展示室へ戻る。抽象がかっている分、秘められた何かがあるようで好奇心をくすぐられる。うっすらと漂う哀愁を噛みしめ、ふと、こちらの世界もかなり意味深かもしれないと思った。……ということで、古い先入観は塗り重ねられながら少しずつ別物に変わっていく、ということを実感した1日であった。

2000年2月12日(月)〜3月4日(土)
なるせ美術座
東京都町田市南成瀬3-1-15
TEL 042-723-2988
10:30〜18:00(日祝休)
入場無料


art102_2-02「巨人と肉体/微人と精神」


art102_2-03第1会場風景。大作がゆったりと展示されている


art102_2-04「Rehabilitation F」


art102_2-05「Rehabilitation B」


art102_2-06第2会場風景。特撮ヒーローをモチーフにした小品が並ぶ


2000-02-12 at 11:35 午前 in 展覧会レポート | Permalink

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