« 岡田裕子展−戯曲「紙と手、恋と謎」について。 | メイン | 荒関善郁展 »
2000/02/07
ハーバリウム 斉藤典子展
「心地良い植物作用」
Metamorphose メタモルフォーゼ(転生)
■私は何事にも先入観がついてまわるタイプの人間だ(唐突ですみません)。先入観はモノを見る尺度には成り得るが、視野を狭くするということも多々ある…と頭ではわかっているのだけれど。展覧会を例にすれば、DMを見て展覧会へ行くか行かないかを決める場合もあるし、行く場合でも、既に脳裏にDMの印象が刻まれた状態で会場に挑むことになる。
■斉藤典子さんからいただいた個展のDMには、ベージュ色の地に大きな緑の楕円(葉っぱに見える)が描かれた作品写真が印刷されていた。斉藤さんの作品を直にではないけれど、以前パンフレットで拝見したことがあり、強いメッセージ性が秘められた抽象的な作風に惹かれた。今回は植物をテーマにしたのかしら…。それまでの斉藤さんの作品とは違う気がして、期待と不安を胸に会場へ向かった。
■訪れたのは2月12日の午後。斉藤さんは在廊していた。左壁には「ハーバリウム」シリーズ8点が展示されていて、DMにあった文字「herbarium」が、「植物標本集」であることを知る。なるほど、葉っぱや花をモチーフにしたような綺麗な色の作品が並んでいる。大きさは縦22×横15cmと小ぶりだが、ひとつひとつ小さな世界をのぞいていく感じで楽しめる。対面の右壁にはメタモルフォーゼ(転生)シリーズが8点掛けられていた。こちらは縦61×横30.5cmで「ハーバリウム」よりも約6倍の面積がある。青、黄緑、白、赤と、色面自体は多彩だ。どの色も、何色もの絵の具を塗り重ねて出しているようである。モチーフは確かに、葉っぱ、雄しべの類、花、といった植物の各部分ではあるけれど、ひとつの画面ごとにどれか1要素をクローズアップしているように見えた。とはいえ、抽象絵画といえばそう見えるくらいあいまいな描き方なので、人によって異なる見方もありそうだ。
■最初の先入観に戻ろう。斉藤さんの作品を会場で見渡して、私はかなり心地良い気分になった。色の美しさ、流れを感じさせる軽やかさ、何かが画面から生まれてくるような期待感がじわじわと伝わってきたのである。DMの写真1点では予知できないイイ空間が在る。「植物のイメージで、自分の中から出てきたものを描きたかった」と語る斉藤さんは、作家活動の他、海外でアートセラピストとしても活動してきた人。DMと同様、この文章でも展覧会の本質は伝わらないと思うので、自省の意味も込めて「百聞は一見にしかず」で締めますね。
2000年2月7日(月)~2月19日(土)
柴田悦子画廊
東京都中央区銀座1-5-1第3太陽ビル2F
TEL 03-3563-1660
11:00~19:00(無休)
入場無料
words:斎藤博美
Metamorphose メタモルフォーゼ(転生)
会場風景(写っているのは斉藤典子さん)
Goethe Series ゲーテシリーズ 左/イタリア紀行 右/植物の変態
Herbarium ハーバリウム(植物標本集)
2000-02-07 at 09:35 午後 in 展覧会レポート | Permalink
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a014e885bb6e5970d015432c74d8c970c
Listed below are links to weblogs that reference ハーバリウム 斉藤典子展: