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2000/01/21

小粥丈晴&雄川愛展−TRIP DAYS

「ふた旅」


art98_01本展「TRIP DAYS」の案内に添付された写真。


■展覧会案内の手紙に貼付されていた写真。一見、アジアかどこかの旅の風景かと思うが、写っているのはジオラマ(模型)だ。会場へ行くと、ドアにも同じ写真が貼ってあり、中にはタネ明かしのように、被写体になったジオラマがある。

■'69年生まれの小粥丈晴さんと'71年生まれの雄川愛さんのコンビ(オガイ、オガワと覚えよう)は、'99年1月に「今年の抱負」というグループ展(ギャラリイK)でデビューし、「NEW LIFE」(現代美術製作所)でイキのいい北欧の作家とともに紹介され、日本の新しいアートを紹介した「Fancy Dance-Contemporary Japanese Art After 1990」(Artsonje Museum、韓国)のひと組に選ばれるなど、昨年1年間で大きく飛躍した。水着の人々がはしゃぐビーチ、草むらなど、どこにでもありそうでどこにも存在しない架空の場所のジオラマをつくり、写真に撮る。部屋のなかで、行き先を決めず、毎日行きたいところへどこまでも旅をする。

■展示されている写真もスケッチも架空ななかで、映像だけは実写だった。'95年にタイへ初めてのふたり旅をし、ヒマつぶしでカメラを回したものだそう。船やバス、電車で通り過ぎる空や水面、街並みや人々……。ふたりで作品をつくり、かたちになってきたのは、'97年。ジオラマはこの旅の再現ではないが、私には切り離して考えられなかった。ただ情報が氾濫しているから、どこでもイメージできるというのだけでもないだろうし。映像を見ながら、実際の旅でしか得られない感触のことを思った。人の動き、気温や天候、そのとき起きた出来事やふたりの気持ち……。時間が過ぎると、それらが断片化されたり、ミックスされる。その新たな空気感が生む風景は、すでにそこにはない場所。身近な場所だって、ほんとは止まってはいない。それを撮りたいのかな、と思った。

■聞いてみるとそれだけではなかった。情報面でも飛行機という交通手段の面でも、行けないところはない。でも行けばいくほど出合えなかった風景が増えていくのだそうだ。結局ふたりとも「また出合えなかった」と悲しい気分になるという。楽しくて悲しい。ふたりが、同じ見えないものを見ている。彼らが探し求める、そこにはない風景が何なのかは彼らにもわからない。ジオラマ写真は、それをまた探す旅だということに気づいたとき、私の心の空がふわーっと動いた。そうかぁ。ふたり旅は再び続く……。

小粥丈晴&雄川愛展「TRIP DAYS」
20000年1月21日(金)〜2月19日(土)
TARO NASU GALLERY
東京都江東区佐賀1-8-13食糧ビル2F
(地下鉄水天宮前駅または門前仲町駅)
11:00〜19:00
日月祝休 入場無料
TEL.03(3630)7759

words:白坂ゆり

art98_02「canal」(1999)。写真に写されていたジオラマ。


art98_03「98.8.10」ジオラマ写真。


art98_04「95.10」タイに旅したときの映像。


art98_05架空の旅のスケッチ「untitled」。


art98_06旅のアルバムのようにファイルされた中の一枚。

2000-01-21 at 09:05 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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