« 河田政樹展−路地を吹き抜け | メイン | 銅金裕司展 »

2000/01/11

堀尾貞治展

年の初めのあたりまえのこと 


art97_horio01会場風景/いつものように堀尾さん(左から二番目)は画廊に来た人と話し込んでいる


■堀尾さんは毎年、年の初めに必ず京都の画廊(アートスペース虹)で個展を開く。嬉しいのは、まるでお年玉のように、彼がつくったこぶし大の干支のオブジェをくださることだ。今年のは龍が力強く描かれている。堀尾さんは毎日かかさず制作をする。それは、彼にとってあたりまえのことだからだ。思えば私自身も毎日のようにあたりまえのこととして画廊や美術館などがあるところに向かう。ほとんど、無意識的といってもいいように。

■もちろん、これがわたしの仕事の一環と言えば、「取材」ということばにも置き換えられなくもないが。書くあてがなくても、見て歩く。いつも通るコースとか、好きな道を遠回りして散歩にかえてしまっていることもある。だからあたりまえのことはカッコ付きのことばではない。

■今回の個展のサブタイトルは(僕)となっていた。外から画廊をのぞきこむ。床には流木らしき乾いた古い木切れが一直線に並んでいる。壁には、いろんな色、これもなんていうのか、いつも堀尾さんが使っているチューブから出してそのまんまのような様々な色の板が、並んでいる。

■聞けば、床に並んでいる木は堀尾さんの身長である168cm。壁には178枚の板があるのだが、これらの合計の重さが彼の体重の61.5kgになるのだそうだ。

■彼のパフォーマンスを先日、『震災と美術 ー1.17から生まれたもの』(兵庫県立近代美術館)の会場で、はじめてみた。終わり際に床にあった彼の作品の一部でもある瓦礫(がれき)を蹴散らしていった。全身の力を振り絞って両腕を横に開いてバランスをとりながら、蹴散らしながら前に進んでいく堀尾さんの後ろ姿が今でも目に焼き付いている。

■彼も5年前神戸市の自宅で被災している。あの日の朝に起きたことは、あたりまえのことではなかった。でも、堀尾さんはあたりまえのこととして、あの日から「震災風景」を描いていた。描かずにはおれなかったに違いない。それは彼にとってあたりまえのことだったから…。

あたりまえのこと(僕)
堀尾貞治展
2000年1月11日~23日
アートスペース虹(京都)
tel.075-761-9238

*堀尾さんの作品は下記にてみることができます。
『堀尾貞治展 あたりまえのこと』
(STREET GALLERY tel.078-842-4114 1月31日~3月5日)
『震災と表現』展(芦屋市立美術博物館 ~2月6日)
『震災と美術 ー1.17から生まれたもの』展(兵庫県立近代美術館 ~3月20日)
『GAME OVER』展(ワタリウム美術館 ~4月2日)

words:原久子

art97_horio03でっかい芳名帳!私もまん中あたりにサインした。折り畳み式になっていて、重さは体重、長さは身長と同じのまさに等身大


art97_horio04長さ168cm。木切れを組み合わせて堀尾さんの身長の長さになっている

art97_horio05178枚が壁に。これらの合計61.5kg。

art97_horio06一枚一枚うらにはこんなふに署名がされている

2000-01-11 at 08:52 午後 in 展覧会レポート | Permalink

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a014e885bb6e5970d01538ef40b71970b

Listed below are links to weblogs that reference 堀尾貞治展:

コメント