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1999/10/04

高橋信行展

「“間の抜けた”ニッポン」


art84_01「お座敷」


■神社や仏閣、松の木、日本家屋など、日本画的なモチーフの絵画。でも、失われゆく日本的なるものへの憧れや保存という意味ではない。たとえば“寺に松”といったイメージは、多くの若者にとっては修学旅行などで見た記憶、テレビの時代劇のセット、マンガのひとコマといった“記号”のようなものだろう。しかもよく見ると、松も森のようにこんもりしていて、「お座敷」という絵の畳や障子と思われる線も、モンドリアンチックな格子やタイルみたいで、なにか妙なのだ。

■「文豪」という絵も、格子が1本つながっていなくて、どこか「すきま風」の風情。思わず半笑いになるインチキくささや、落語のオチ的な「粋」を感じ、あるインタビューを読み返したら、「日本的情緒とか、懐かしいなと思った瞬間、インチキくささが目に飛び込んでくるのがねらい」だと語られていた。そこには、和洋折衷、飽きっぽくてマネ好きで、伝統に対する意識が案外希薄な日本への、チクリとした揶揄も含まれているのかもしれない。が、'68年生まれの若手作家である高橋さんは、いい具合に間が抜けた、スキのある日本文化を楽しんで描いている気がして、なんだかリラックスして見られる。

■表現の技法は、色鉛筆や油彩で描くか、マスキング(紙の上に山や木などの型紙をのせ、ラッカーで彩色したあとに紙をとりのぞく)などで、線や形もいたってシンプル。屋根が半分塗られていないといった、余白も多い絵画だ。さらっと描いた風に見せて、実は“推敲”を重ねた、緻密な作戦のうえに成り立っているらしい。その心意気や、粋で軽妙で美しい余白=「間(ま)」こそが、日本的だなぁと思う。いい加減ぽさが、良い加減。

高橋信行展
1999年10月4日(月)〜16日(土)
なびす画廊
東京都中央区銀座1-5-2
銀座ファーストビル3F
tel.03-3561-3544
入場無料
11:30〜19:00(土曜〜17:00)日休

※9月4日(土)〜10月17日(日)
芦屋市立美術博物館
坂井淑恵との二人展
「グリーン・イン・スピリット」にも出品。
tel.0797-38-5432
関西ギャラリー情報を参照

※12月25日(土)〜1月23日(日)
水戸芸術館「クリテリオム42」でも開催
tel.029-227-8120

art84_02「会場風景」左は五重塔


art84_03「花咲く小道」キャンバスの地が活かされた、切り絵のように見える絵画


art84_04「見どころ」(部分)寺の花咲く樹が、レースの花模様の転写で表現されている


art84_05「文豪」


1999-10-04 at 10:53 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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