「ニッポン画」山本太郎個展

「わたしたちの日本観」

ニッポン画松翁図屏風

■金箔のゴージャスな輝きが目にまぶしい。そこには、荒れ狂う白波に日の出、枝振りのいい五葉松、雲海といった伝統的な絵画のモティーフが登場する。カギカッコでくくられた展覧会名の「ニッポン画」。「ニホンガ」と発音する従来の「日本画」との差異を強調している。

■日の出の太陽の朱赤の丸のなかには、コカ・コーラ、カーネル・サンダースおじさん、LEVI'Sのロゴマークが入っている。アメリカの大衆文化を象徴するものを、オーソドックスな日本画の様式のなかに用いる。これは両極をひとつの場で出合わせるという、大胆だが、美術の手法としては定番な見せ方であろう。

■フロアを畳敷きにして、床の間までこしらえて展示していた。とはいうものの、靴を脱いで正座をして床の間に掛けられた掛軸を見上げると、座ったときの目線の位置には配慮していなかったようだ。あくまでも、立ってみたときの目線が優先。畳に座ったときの、日本的空間を意識した見せ方をするはずだと考えていたのだが裏切られた。

■私たち日本人の暮らしのなかで、すでに床の間の軸も、屏風も、日常的にはないものになりつつある。フライド・チキンやコーラのほうがより日常に入って来ているようにも思う。日本文化に触れるときに、私たちは「ニッポン」的なるものを見ているのかもしれない。

●「ニッポン画」　山本太郎個展
1999年10月7日（木）～11月19日（火）
複眼ギャラリー（大阪）
http://www.nttl-net.ne.jp/fukugan/

ニッポン画C雲図

ニッポン画L波図

ニッポン画C掛図