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1999/09/06

山本ヨウコ展

「真昼の行進」


art80_07展覧会風景


■9月12日、日曜の昼下がり。その日も猛暑だった。銀座の歩行者天国に現れた行進は、暑さゆえの蜃気楼かと、人々を戸惑わせるに十分なインパクトだった。作家の山本ヨウコさんが制作した、両手がつながった木綿の白いスーツとマスクを着た22人が、銀座8丁目から中央通りを抜け、国際フォーラムまでを往復した。ギャラリーでの展示を見た数人から「実際に着られたらいいのに」という声が挙がり、急遽、日曜のパフォーマンスと相成ったという。学生から社会人まで参加者の多くが、この日初めて顔を合わせた。

■この服を着ると体型も顔も判別不能だが、両手がつながっているため、手を握らないと危なくて歩けない。参加者は、自然にお互いを気づかい、声をかけあう。“人は互いを知らなくても、常に隣同士の関係を持って生きている”という「the contact」と題されたインスタレーションが、生身の身体を借りて、街なかに飛び出していったのだ。

■街の人の反応は、マスクのせいで不安がる人も多かったので、私も写真を撮りながら「手の部分がつながったひとつの服を、みんなで着て歩いています」と伝えると、笑顔になった。おもしろがって写真を撮りに来る若者、子供たちは「かわいい」といって、寄ってきた。道中、赤ちゃんに泣かれたり、犬にほえられたりもしたが(笑)、ゆずを歌う2人組の男の子と歌ったり、店の中にいる人と手を振り合ったりもした。もちろん、いぶかしげな人も、目を合わさないように避ける人も少なくはなかったが、誰に止められることもなく、無事に終わった。はたから見ると宗教団体っぽくもあり、マスクの下の笑顔を見せられたらとか、もう少しユーモラスな造形であれば、とも思ったが、すれ違う人に最初から笑顔で接することは、日常ないものね。

■参加者には「マスクをしてたから大胆になれた」という人もいたが、奇妙な連帯感も後押ししたのだろう。私はといえば、以前に一度会ったきりの人とも再会した。確かに何かがつながっていた。

山本ヨウコ展
1999年9月6日(月)〜11日(土)
モリスギャラリー
東京都中央区銀座7-10-8第5太陽ビル1F
tel.03-3573-5328


art80_08こんなふうに、すべての両手がつながっている。もともと山本さんの体型に合わせた作品のため、ワンサイズ。先頭の山本さんから順番に、全員が着るまでに1時間半。


art80_09マスクをかぶると、“誰でもない人”に。印象にかなり違いが。


art80_10でも、行進中、子供たちが寄ってきた。どこでもダイレクトに反応してきたのは、子供たち。


art80_11国際フォーラム。リチャード・ロングの石の作品にて、休憩中。コミュニケーションが生まれている。


art80_12半日で、この満面の笑みと連帯感。作家の山本さんは、前から3列目の右から3番目。

1999-09-06 at 10:15 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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