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1999/09/06

三木学写真展 Dis - City

「都市にうつった歴史」


art81_m01難波宮からみた大阪城と大阪ビジネスパーク


■人によって写真を撮る理由は異なる。私が撮るときは、ほとんどが資料、記録用である。表現したいものがあって撮るわけではない。仮にどんなにバランスのとれた構図に撮れていて、鮮明に被写体をとらえていても、いい写真であっても、それがすなわちアートであるという公式はなりたたない。

■このDis-Cityという展覧会では、大阪の街をさまざまな角度から撮った写真が展示されていた。ぱっと見ただけでは、淡々と都市の風景を切り取ったとしか思えない写真が並ぶ。しかし、よくみてみるとそのなかには異なる時代に建った建築物やその遺跡が、同じ画面のなかに存在する。

■例をあげれば、難波宮跡といくつか同じかたちの建物が並ぶ一般的な団地の様子が写っている。国を治めていた人物の居所であったところが、時代を経て、市民生活が営まれる場と隣接する位置に今はある。権力構造の変化など、その土地が背負ってきたさまざまな事実とともに、写真をみると興味深い。

■同じ難波宮を反対方向から写すと、遺跡と大阪城と副都心的な場所大阪ビジネスパークの高層ビル群がひとつのフレームにおさまる。それぞれの時代のランドマーク。時代とともに移動する中心。そのかたちのコントラストも目をひくものがある。

■都市を織りなす要素として決定的存在である建築物。建築はつねに権力と結びついていることは言うまでもない。並んでいる写真は、1枚ずつでも成立するし、隣り合せた写真同志も相互に関係している。みているうちに、いろんな時代へと、頭がトリップしていく、写っていないものが見えてきたり、わたしたちの知らない未来が浮かんできたりもする。

三木学写真展 Dis - City
1999年9月6日~18日
The Third Gallery Aya(大阪)
問い合わせ:06-6366-8226


art81_m02梅田新道の大同生命ビルはまるでロボットのようにみえる

art81_m03右の写真には中ノ島中央公会堂ごしに大同生命ビルがみえる。中央公会堂の建った時期は日露戦争の直後だった。建物はどことなく軍艦にも似たかたちだ。

art81_m04全国的に有名は大阪の通称ひっかけ橋(戎橋)。左手の黒っぽい建物は45年3月の大阪大空襲の戦火をくぐり抜けた痕跡が残る。正面真ん中にそびえ建つのは南海サウスタワー

art81_m05大阪ドームとガスのタンク。大阪交通局の趣き深い建築の向こうに銀色に光る大阪ドーム

art81_m06左は作家の三木さん。写し出され場所の歴史的背景と建物との関係。土地や建物を支配する権力や政治も問題にまで話しはつきない

1999-09-06 at 10:11 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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