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1999/09/06

吉本作次展

「絵画っておもしろい!」


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「町屋玄関図」瓦はまえから描いてみたかったとのこと


■入口の引き戸から人物が顔をのぞかせていたり、座敷のほうに登場したり。直線で区切られていった日本家屋。そこに突然あらわれる有機的な曲線をもった襖絵。人物は「ここを見て!」という注意を引き付けるためのサインになっている。極端なパースがついて、ずいぶん遠くにいるようにみえる小さな人影。ドットのように筆をおいて畳の目を表わし、各々のかたちの特徴をユニークにとらえて描いていく。

■この「町屋玄関図」では、これまでずっと気になっていた瓦屋根を、吉本さんははじめて描いたのだそうだ。単純な四角いユニットだが奥が深そうだ。集合体になると微妙なウエイヴの連続をつくりだす。曲線と直線の融合、見る角度によって変化するかたち。光りの当たる角度によって、銀鼠色に白っぽく輝いたり…。最近は、瓦屋根も少なくなったが、ふむふむ、改めてその魅力を絵のなかで体験する。

■画廊のオープニング企画“絵画劇場”というシリーズ=第1弾の展覧会だ。いくつかの実験的なことを、作品のなかで、吉本さんは見せている。例えば、過去の美術家たちのさまざまな絵画の試みをわかりやすく見せてくれてもいる。抽象的に描かれていてよくわからなかったことも、どんなに偉い先生の本を読んでもわからなかった理論も、「なんだ。そうだったのか」と納得してしまうほど、わかりやすく描かれている。

■黒い輪郭線、その間を塗りわけられた色の面。よく見ていると、下には風景画がある。なるほど、下に描かれたものとダブらせてみていくと、作家が何を表現しようとしているのかが理解できる。自分にとって強調したいラインを太い線で描いたり、必要のないものを省いていったり、大胆な足し算引き算の成果である。

■真っ黒な背景に金色で行水する人が描かれている。塀や人の大きさや、角度で絵画のなかに奥行きのある空間をつくりだしている。吉本さんの作品には、ひじょうにシンプルで愛らしい画面構成のなかに、たくさんの要素が盛り込まれていて、それを発見していくのはとても楽しい。わたしが楽しんでいる様子に、吉本さんも微笑みを絶やさずに対応してくれた。彼は、絵のなかから飛び出してきた妖精ようだった。もしや、わたしが画廊を出たあとは、絵のなかに戻っていったかも知れない?!

吉本作次展
1999年9月6日~18日
Oギャラリーeyes(大阪)
問い合わせ:06-6316-7703

*10月5日より名古屋市市民ギャラリーにて行われる展覧会にも出品予定

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「座敷風景」新聞を読む人の向こう側の建具にあるのは竹とトラ

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「オランダ風景図」

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「オランダ風景図」(部分)下にいわゆる写実的な風景画がうっすら見える

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「行水三態」塀に注目してくださいね

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「御婦人画習作」消した痕跡が残っている木炭の線のあとが見えますか??

1999-09-06 at 10:06 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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コメント

名芸時代は大変楽しい時間を共有出来て良かったデス、毎日。町野氏のアパ-トで飲みましたね、これからもご活躍期待しています。

投稿情報: Bob | 2005/10/27 1:26:31