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1999/09/03

キリンコンテンポラリー・アワード1999受賞作品展

「一筋縄ではいかない作品たち」


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西尾康之「蟻塚・ジオラマ」ツメ跡がリアルな力作


■キリンビール株式会社が1990年から開催してきたコンクールが「キリンコンテンポラリー・アワード」。過去、最優秀作品賞に輝いた作家はヤノベ・ケンジ、出淵亮一朗、山宮隆・・・ら異色揃い。彼らをはじめ受賞者たちの顔ぶれをみれば、そのコンクールの目指すところが見えてくる、としたら、キリンのアワードは、一筋縄ではいかない、コンセプトのしっかりした作品が並ぶ展覧会といえそうだ。

■会場には、最優秀作品賞1名、優秀賞3名、奨励賞9名の作品が展示されている。足を踏み込んだ第一印象は、なんだか楽しげなアミューズ空間。まず目につくのが、超ドハデなストライプのお部屋。入ると豊満な胸を出した女の子の等身大フィギュアが並んでいる。この作家はスキャット好きらしい(松山賢「恋のミニミニスキャット」)。好きなものは好き、と大声で言えるのはいいことにちがいない。

■では私も、好きな作品を探すことにする。会場を見回すと、歯科治療室のような作品、フォトモ(フォトグラフィ・モデルの略でプリント写真を立体的に組み立てたもの)等いろいろある。まず接近したのは西尾康之「蟻塚・ジオラマ」。作家のツメや指先の型押しでビルや車を型どり、高層ビル街を作り上げている。その痕跡は見るほどにゾクゾクしてしまう。

■さて、次へ。最優秀作品賞の束芋(たばいも)「にっぽんの台所」は、日の丸柄の障子の個室でアニメーションを流したものだが、このアニメがマルである。風刺チックでセンスよし、内容もわかりやすい。一方、同じ映像でも、板倉亜由子「おふろ生活」は、自己を写したプライベートもの。バスタブに浸かった作家が、そこに浮いているリンゴやバナナを食べ「食べる、出す、寝る」を延々と口ずさむのだ。ついに作家は湯船の底からそうめんをすくい上げ、それも食べてしまう。行為はさらにエスカレートし・・・あきれながらも興味をそそられている自分に気づく。

■そういえば、わけのわからない作品というのもけっこう好きである。上下スクールジャージの老人が、寝転がって腕と足を上にのばして空をあおいでいる、前堀浩二「ヨガ」。スイッチオンで両足がバタンバタンと上下に動くが、それが現代社会にもがく姿なのか、単なるノーテンキな運動なのか、謎である。神妙な顔つきがやけにりりしい。とにかく、ジャンルや手法の異なる作品が全13点並んでいるので、それなりに楽しい時間が過ごせるはずだ。

キリンコンテンポラリーアート・アワード1999
1999年9月3日(金)~10月10日(日)
キリンビール新川本社
中央区新川2-10-1
tel.03-5540-3451
9:00~18:00
入場無料
無休

10月15日(金)~11月7日(日)
キリンプラザ大阪(tel.06-6212-6578)へ巡回


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束芋「にっぽんの台所」障子をあけていざ中へ

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束芋「にっぽんの台所」中はこんなノスタルジックなアニメーションが流れている

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板倉亜由子「おふろ生活」数分見ればトリコに

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前堀浩二「ヨガ」かなり気になるポーズ

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会場風景

1999-09-03 at 09:48 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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