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1999/08/19
荻野瑞穂「真夜中に出歩く者たち」展
「肉体は魂の殻にすぎないわけじゃない」
「Midnight Walking #4(green)」「Midnight Walking #5(blue)」
■荻野さんの展覧会名は、いつもなかなか魅力的だ。これは「行かなきゃ」と思わせる。実際に行ってみて、どうしてこのタイトルつけたの?という場合もあるのだが、それは「来させたものが勝ち」である。軍配は荻野さんにあがる。
■「真夜中に出歩く者たち」とはいったいどんな人たちなのだろう。誰でもない誰か、それとも、作家自身。魂の抜けた肉体が徘徊すること。魂だけが残った亡霊が彷徨うこと。会場には、人の浮かぶように描かれていた。電球に背中を照らされた人。描かれた壁に直角に接している壁にあるクラフト紙には、人影が映し出されているかのようなドローイングがほどこされている。
■どんなかたちであれ、私たちは肉体をもっている。すうっと伸びる細い手足、弱い顎のライン、薄い胸。荻野さんの作品に登場する人物は性別を超えている、というか、意識的にそういった概念を崩そうとしている。実のところ、性別すら問題にはなっていないのかもしれない。われわれは進化を続け、生物学的には性別をもつようになった。一旦は制度的にも分化されていったが、いまはその境をつくらないことへと様々なことが向かっている。
■まるで抜け殻のような肉体であっても、精神が宿っていることが伝わってくる。壊れてしまいそうな身体の線であっても、それは存在感の希薄さにはつながらない。ただ、見ていてもどかしかったのは、私にはその存在が「何なのか」がはっきりと認識できないことだった。気になるのだが掴めない。作家が横にいたが、あえて尋ねなかった。もしきいても、はぐらかされたかもしれないが、いろいろと思いをめぐらせている時間が楽しいとも思ったから。
荻野瑞穂「真夜中に出歩く者たち」展
1999年8月19日(木)~28日(土)
12:00~20:00(最終日~17:00)
複眼ギャラリー
大阪市中央区西心斎橋1-6-26 3F
tel.06-6253-3266
(手前)「Untitled(Against the wall)」(奥)「Untitled(Snake-head and Woman)」
「Untitled(Against the wall)」
「Midnight Walking #7」
1999-08-19 at 11:15 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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