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1999/08/19

サカグチタカコ「ガラスの靴」展 

「シンデレラは永遠に」


art79_01窓越しにみたギャラリー内


■だれもが読んだことのある童話のひとつに『シンデレラ』がある。継子いじめにあっていた心優しい娘が、最後には幸福になるという、定番中の定番の物語である。クライマックスといえば、真夜中12時の鐘が鳴ってガラスの靴の片方を落していく場面と、シンデレラを探す王子の使者が差し出した靴に、彼女が足を入れる場面だろう。そんなシーンを再現した作品に出合った。

■舞踏会の会場で走り去るシンデレラを目で追っているようにみえる王子を背景に、ドレスを着た娘の人形が立っている。登場する人に顔がないのは、キャラクターを限定しないため。みる人の想像力を喚起させたいがため。色はドット状にして表わしていて、既成の布も水玉のプリントのものばかりを使っている。近くでみると色覚検査のようだが、離れて見ると色が混ざり合ってみえる。

■ギャラリーに入ると赤いクッションの上に裸足になって片足をのせるように作家に促された。ガラスの靴は透明で見えないので、ピンクのカバーのついた粘土のうえに足をのせて、足型をとる、とか言われた。下にキャスターがついていてズルっと滑る。そうすると、約90°の角度で接続しているシンデレラ人形もいっしょに滑って動く仕組になっていた。滑るのではなくて、12時の鐘の音を聞いて走り出す、という設定らしいのだが、とても滑稽だった。

■にこやかに説明をしてくれる作家のサカグチさん。要素を記号化したりしつつも、ファンタジックな作品なのかと思ったら、けっこう笑いの要素も含んでいる。舞踏会を演出するためにワルツが会場に響いている。入口のガラス面に、真面目な顔で足を載せた不格好な自分の姿が映っていた。われながら、ちょっと情けない。

■あたりが暗くなった午後7時ころ。前面がガラス張りのギャラリーは、ぽっかりとオフィス街の暗闇に浮かぶ、おとぎ話と小さな笑いのステージになっていた。

「ガラスの靴」展 サカグチタカコ
1999年8月19日(木)~31日(火)
ギルドギャラリー
(大阪市北区神山町1-11扇町ミュージアムスクエアビル1F tel.06-6361-6636)


art79_02


手前のまわりが赤に白い水玉で、ピンクのクッションが真ん中にありますが、ここに足を置きます。

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手を差し出す王子さま

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鏡にうつったガラスの靴

1999-08-19 at 11:20 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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