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1999/08/30
田島佳世展
「それでいいじゃん!」
これがDMの絵。「風の道標」油彩
■「今回は、あまり考えずに自然に出てきたモノを出しました!」と、晴れやかに田島さんは言った。私は田島さんの作品について何ひとつ知らず、ただDMに惹かれて見に行った。すべてを受け止めて静かに瞑想しているような山羊の絵だ。
■'67年生まれの田島さんは、10年前から版画を始め、今回10年ぶりに油絵の具を取り出したのだそうだ。版画を始めてから、技法に凝りだし、そのうち「つくらなければ」という強迫観念にとりつかれていったという。'98年にはあきる野市のアーティスト・イン・レジデンスに参加し、作品はふだんの生活の中から出てくるものだと気づいた。友人を訪ねていったメキシコでは、日本とは異なる習慣などに触れ、「こうしなきゃいけない、ということはないんだ」と肩の荷が下りたという。だから、山羊の絵は、頭に浮かんだイメージに素直に描くため、油彩にした。「こういうことだったのではないか」とピタッとくる感じがし、絵を描き始めた頃の気持ちに戻れたのだそうだ。
■田島さんは、世間の常識とちょっとだけズレたものを秘めながら、常識的な親の教育のもとに育った、社会性ある人だった。アーティストとして、破天荒ではない自分を悩んだこともあったという。そりゃあ、アーティストはズバリ変人であるほうがおもしろい。でも、何かを悩んだり吹っ切ったりした過程の見える、“隣にいるような”誠実な作家もいていい気がする。
■山羊の絵を描いてからはしばらく何もせず、家にこもり、友人との連絡を断ち、社会から切り離されていくような、不安と裏腹な緊張感を楽しみながら、「なにかが降りるまで描かない」と決めて、待ったのだそうだ。今回発表した絵は、ほとんどこの1カ月で描いた。その中で、ふだんかかわりのある人やモノとの距離感、周りがあって自分がいること、生態系のなかの自分などに思いが及んだという。縛られたものをとっぱらい、「それでいいんじゃん」という気分らしい。
■私もまったくヘンにもなれず、その割には普通の暮らしではない方へ、中途半端に向かっている自分を、「まぁ、いっか」と思いながら帰った。
田島佳世展
1999年8月30日(月)〜9/11(土)
ギャラリー21+葉
中央区銀座3-4-17チェリービル2F
tel.03-3567-2816
11:30〜19:00(最終日〜17:00)
日休
会場風景
「The Fount Know-ledge Ⅴ」より リトグラフ、ドローイング
「ゆるやかな時間」より リトグラフ、顔料
1999-08-30 at 09:19 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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