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1999/07/16

山本香展

「もうひとりのわたしが見ている」


art75_y01会場風景、写真を鉄製のフレームで縁どっている


■「愛の部屋」というシリーズは、山本香さんのセルフポートレイト作品だ。作品のなかのカツラや化粧で変装した女性は、わたしの目のまえで笑顔で話してくれた作家自身とは、まるで別人である。ラブホテルの部屋でカメラにおさまる彼女には陰がある。こわばった表情でレンズをみつめていたり、遠くを見ていたりする。

■カメラや衣装などの撮影用の荷物をガラガラとカートでひっぱりながら、ラブホテル街をうろつき、撮影場所を探すという。うらびれた雰囲気のホテルを選んで撮影をする。普通ではないとても怪しいこの空気はどうして生まれるのか。愛を確かめ合うのに、こういった設定がどうしても必要なのだろうか?とにかくそんな沢山の疑問が湧いてくる一室をロケ場所に使っている。歌の文句のようだが、ときには娼婦のように、ときには少女のように扮して。

■写真のなかには、作家自身が想像し、創造する「愛の部屋」がある。シャッターを押した瞬間の向こう側にある物語を見るものに考えさせる。レンズのなかの自分と、そんな作品をつくろうとしている現実の自分自身をみているもうひとりの自分がいるように、たんたんと話してくれる山本さんをみていると感じた。

■人間の愛や欲望や葛藤を考えるのも、変装してポーズをとって、淫らな自分を演出してみるのも。物憂げな表情の自分に陶酔してみたりするのも全部ひとりの人間である。もうひとりのわたしが見ているのだ。

■部屋に入ってくる人の数だけ愛があるのだろうか?リアルを装っているけれど、全部が嘘っぽくて、茶化しているような「愛の部屋」は、泡沫(うたかた)の愛を冷ややかにみつめている視線に思えた。

山本香展
1999年7月16日(金)~8月27日(金)
CAS
大阪市中央区内淡路町2-1-7都住創内淡路602
tel.06-6941-3237
13:00~19:00
日月火祝休

words:原久子

art75_y02スリップのうえに羽織ったカーディガンとかかとが少しあがっているところが何だか色っぽい


art75_y03部屋の隅に立ちつくす女性。女性に潜むさまざまな葛藤を見せようとしているのか


art75_y04ラブホテルの部屋には鏡はつきものらしい。鏡のなかの自分に何を見ているのだろう


art75_y05それにしてもラブホテルの部屋はなにか普通ではない。とても淫らにつくられている


1999-07-16 at 11:05 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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