1999/07/10
宮下マキ写真展
「わたしを見せます」
会場風景(中央のテーブルには掲載誌などの資料)
■下着姿の80人の女性を自室で写した写真作品がずらりと並ぶ。つくられた設定のなかに置かれるのではなく、日常の生活が行われているその場所が舞台である。脱ぎ散らかした服の山もあれば、きちんと整えられた部屋もある。ベッドに寝転がったり、本を読んでいたり、壁に張ったポスターの男性に頬ずりをしていたり。カメラに対する向き合い方も千差万別だ。でも、宮下さんはポーズをとって欲しいとはあえて言っていない。
■プライベートな部屋は個人の内側を映し出すところがあるように思う。下着も同じかもしれない。イメージを損なわないために服装を選んでいても、その内側に着けている下着の趣味はわからない。宮下さんはどちらも本人のこだわりが出る部分だから、この組み合わせをもってきたと言っている。このテーマは宮下さん自身の東京での部屋探しに、実は端を発していたという。
■自分のプライベートな時間を撮影した写真を発表する女性が多くなっている。水戸芸術館での「プライベート・ルームII」展(99年4月3日~6月6日)に出品していたのも全員女性で、宮下さんもその出品者の一人だった。今回の個展で被写体となっているのは10代後半から50代までの女性。とてもリラックスした表情で健康的に写っている。健康的でありつつも、しっかりフェロモンが漂ってくる人もいる。
■宮下さんの視点でもちろん撮られている作品で、彼女の表現なのだが、見ていると、撮られている人の表現でもあるように見えてくる。「わたしを見て」という存在の主張とでもいうのだろうか。
■会場の横にあるカフェには新作の「寝食共存」のシリーズは、「部屋と下着」というシリーズとはかなり違う。まったく異質とも言える。そこにあるのは「わたし」ではなくて、人間と人間のあいだの関係性に生じるナマ臭さのあるものだった。このシリーズの展開も期待したい。
宮下マキ写真展 部屋と下着
(同時開催「新作 寝食共存」
1999年7月10日(土)~8月22日(日)
prinz the gallery
京都市左京区田中高原町5
(叡電駅茶山駅より徒歩3分)
tel.075-712-3900
11:00~19:00
月休
words:原久子
壁を埋め尽くす写真
下着姿の女性たちはセクシーというより開放感に満ちている
新作「浸食共存」は別室のカフェにて展示
カウンターの邪魔なものは私が飲んだエスプレッソのカップ
1999-07-10 at 10:59 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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