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1999/07/10

林佐織展

「痛快! 境界線上の脅威の新人(?)」


art74_006ペンキ画。描かれた板もチープ…。


■「どーですか、お客さん?」というのは、アントニオ猪木が客席を巻き込む有名なマイクアピールなのだが、まさに、林さんの絵をこのセリフとともに投げかけたい。林さんの即興的な絵は、子供がチラシの裏に、クレヨンが服につくほど、ボールペンが紙を突き抜けちゃうほどの熱の入れようで描く絵を思い出させる。何を描いているか判別不能。この個展は見なかったことにした方が無難かも、という迷いも少しある。というか、「迷った」と前置きした方が身のためかも、と思う。でも、おもしろい。ツボにはまるのだ。

■林さんは、'72年、名古屋生まれ。昨年、アーティストの斎藤公平さんの企画により初個展を開催。年明けに、元・水戸芸術館学芸員、現在はフリーで活躍中の黒沢伸さんと斎藤さんとで企画した、異色若手作家のグループ展「1999 今年の抱負」(ギャラリK)でも紹介された。私は両方見逃しているが、こちらはドローイング展だった模様。

■林さんは、とにかく描くのが速い。所用時間3秒に1枚! 現在はコンビニ店員でもあり、スキを見てはお客が置いていったレシートにもモーレツな勢いで描いているという。もう、どうにも止まらない感じなのだが、手の動きで描きたいから、フラストレーションなどをためて一気に描くらしい。時間をかけると頭に何か浮かんで来て、真っ白になれないのがイヤだという。それってオートマティスム、シュルレアリスム? いや、大まじめに説明していくと、気恥ずかしくなってくる。

■今回のペインティングも速く描くため、アクリルやペンキを含ませた極太の筆を使っているが、絵の具が筆に染みるのを待つのさえもどかしいとか。乾ききらないうちに搬入しているから、ふにゅっと盛り上がっている部分はあるわ、梱包紙にも絵の具がついちゃうわで、大変。でも、全然気にしない。アバウトなのか、キッパリしているのか…。でも、ひとつだけキッパリしている。それは誰のマネでもないこと、これまでのアートの匂いはさせないこと。

■このプリミティブな感じは、来月、ガーディアン・ガーデンで行われる公募展「第14回グラフィックアート3.32(ひとつぼ)展」の70年代生まれの作家の入選作にも、今回特に見受けられる。これは、なにかキテイルと思うのだが、どーですか?

林佐織展
1999年7月10日(土)〜31(土)
ナガミネプロジェクツ
東京都中央区銀座7-2-17南欧ビル4F
(地下鉄銀座駅より徒歩5分)
tel.03-3575-5775
11:00〜19:00
日月祝休

words:白坂ゆり

art74_007怪獣からボール光線発射か? バレーボールか、コミュニケーションか(違うか)。


art74_008これが、最速ドローイングだ。ぐりぐりと描いている。


art74_009アクリル画。


art74_010千羽鶴のような毛糸のオブジェは、最初の展覧会から吊している。縁起担ぎ、お守りのようなもの。

1999-07-10 at 09:08 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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