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1999/07/30
宇津木 彩展
「光をとらえる」
Anno Luce 1996-99 会場に入ると目に飛び込んでくる、すりガラスの光のトンネル。光がアルミ板にも反射している。
■西南の角に位置する展示室が、木やアルミの素材で中がガッチリ覆われているのが、窓ガラス越しに見えた。中に入ると、真っ暗闇。けれど、中央に光の箱がキラリと浮かんでいた。SFみたいだ。ちょうど西側の窓と南側の窓にロート状の大きな四角錐が取り付けられ、両窓から入った光が、その先端のひとつの磨りガラスのトンネルに集まるような仕組みになっているのだ。だから、中にいる人には、光だけしか見えない。
■左右から入ってくる光が、ひとつの場所で出会っている。最初はよくわからないが、まるでふたつのお酒をブレンドするようなその状態は、じっと観察しているとだんだん様子がわかってくる。当然のことながら、太陽の照り具合、傾きにあわせて、光の様子が刻々と変わっていく。外は煮えたぎるほどの灼熱のカンカン照りなのに、中では、光は目の前に閉じこめられ、シンとおとなしくしている。光を見つめる行為は、こんなにも涼しげだ。夕方近く、西日が直射する時間には、さらにこの光の箱は輝きを増す。
■タイトルの「アンノ・ルーチェ」とは、イタリア語で「光年」の意味だそうだ。1年に95億キロメートル旅して、ようやく1光年。遙か彼方から地球に届く永い光の旅に思いを馳せようという作品の意図は、結果として、身近な事象に翻弄される、夏の火照った頭を冷やすのにはじゅうぶんすぎるほど効いていた。
■宇津木彩(うつぎ・あや)さんは、4年間のイタリア留学と滞在を経て、昨年末帰国した。異なる文化に暮らした経験によるのか、彼女の作品には複数のものごとの関係をつなぐようなイメージがしばしば登場する。飛躍して考えれば、比較ではなくむしろ関係性を編んでいこうとする彼女の姿勢が、あるときふと、すべての日常性を飛び超えて上から眺めるような視点をとったのも、ごく自然の成り行きといえるのかもしれない。そんなふうにして、ときどき頭を真っ白にして、遠いところからものを見るのも悪くないなと思ったのだった。
「宇津木 彩─Annno Luce─」展
7月30日(金)─8月21日(土)
sagacho bis
東京都江東区佐賀1-8-13食料ビル1F
tel.03-3630-3454
11:00-18:00 入場無料
月休
words:宮村周子
左右の窓から集まってきた光は、太陽の状態によって、強まったり弱まったりする。まさに生きる彫刻。
暗闇に光のチューブが浮かぶ。形があるようでない、ここでしか存在しない作品。
会場の外側から見ると、窓越しにアルミと木材を使った大がかりな構造がわかる。繊細な内部との対比が面白い。
sagacho bis(手前の一階角)のある食糧ビルは、なかなか趣のある場所なんである.
1999-07-30 at 09:33 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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