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1999/05/21

當世物見遊山 展

「いざ行かん!」

art69_t01お宿「吉水」全景


■画廊や美術館といったアートのための既存の器から飛び出して展覧会や、アートイベントが行われることが多くなった。京都市立芸大の学生の頃から、展覧会を企画し、催しそのものを自分の作品といった位置づけで、展覧会のディレクションを行ってきた谷本研さんが、今回は日本旅館を会場に「当世物見遊山」という展覧会を行なった。

■京都観光に来た人ならずとも、祇園の円山公園の高台の宿は、だれもが頷く最高のロケーションだ。客室を1室ずつ使った展示をしたアーティストもいれば、洗面所や浴室などの鏡や石鹸を使い作品にしてしまった出品者もいる。もちろん、広間や庭も、野外の借景までとりこんでいる。

■玄関で、入場料(五百円)を払うと、この展覧会を楽しむためのガイドブックとおみやげ、そして「梅升(うめます)」という展覧会のキーワードである「物見遊山」やこの地「円山」にちなんだ言葉のクロスワードパズルが手渡される。袴をはいて書生ルックに身を包んだ谷本さんが、来場者やアーティストを気遣いながら、忙しそうに会場内をあっちへ行ったりこっちへ行ったりしている。(実は彼はこの旅館に暮らす本物の書生でもある。)

■広間ではゆっくり座ってアーティストの作品ファイルや過去に出品した展覧会のカタログなどを閲覧できるようになっている。美術館に行って知らない人と言葉を交わすことなどないが、ここでは旅館で一緒になった客同士のように、座布団を譲り合ったりしながら自然とコミュニケーションも生まれる。

■実は展覧会期間中も宿泊客をとっていた。なにを隠そう私自身もその宿泊客のひとりであった。山本香さんのホワイトタイガーを写した作品と一夜を伴にしたわけだ。浴室の石鹸は皆に使われて、頭がついていることがかろうじて確認できる程度の形になっていた。

■旅館という空間、円山という場、企画者の意図を出品作家がそれぞれにくみ取った作品、しっかり物見遊山させてもらった。次なる企画はどんな場所で、そんなテーマで考えているのか気になるところだ。

當世物見遊山(とうせいものみゆさん)
出品作家/荒蒔綾子、蟻川知子、
池田朗子、釈永道代、
ムラギしマナヴ、森太三、
山本香、三木学、企画・谷本研
会場/お宿「吉水」
 京都市東山区円山公園弁天堂上
 tel.075-551-3995
会期/1999年5月21日(金)~25日(火)


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ムラギしマナヴ作品の部屋。文机のうえには彼の書いたテキスト類と「ポケ盆」が並ぶ。

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蟻川知子作品の部屋。京都の観光絵葉書に、友人たちから借りた修学旅行のときの集合写真をはめ込んでいる。開いている作品は夕焼けの五重塔の前にて。逆光で人物が真っ暗にシルエットだけになっている。

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山本香作品の部屋。動物園のホワイトタイガー。見る側、見られる側のまなざしという視点から、観光というテーマを考えていた。

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庭に出ると荒蒔綾子作品の「卍(まんじ)茶屋」。中央のテーブル状になった部分にクロスワードパズル(三木学作品)。

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池田朗子作品。鏡に王冠の絵のシールが貼ってある。そこに自分の姿を映すと王女様になれる。「Are you princess ?」を反転させた文字も。

1999-05-21 at 08:44 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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