« レベッカ・ソルタ 神内康年展 | メイン | 廣岡千恵展 »
1999/04/20
山崎暢子展 DOMESTICATION
「飼いならすこと、飼いならされること」
牛を解体した形
■山崎さんの作品には、生活のなかの身近なモティーフが選ばれてきた。これまでにもソファやタオルなどが作品になっていた。柔らかいはずのものが、硬くて冷たい四角いタイルのブロックで表面が覆われていて、硬いものと柔らかいものの対比がある。ジッパーがついていて、中綿が入っていて膨らみのある作品たちを、彼女はどれもクッションと考えている。
■牛皮製品についているマーク(牛を解体して広げた形)に中綿を入れた黒い作品。ハンガーにかかった黒いコート。牛の体にある白地に黒い模様のクッション。女性用のワンピース水着の作品は陰陽が一対になっている。
■彼女の作品にはどれもタグがついていて、「point de capiton」と書かれている。これは哲学者のラカンが云った言葉の引用なのだという。作品のなかの中綿は、血や肉といった私たちの体内のなかのものを表わしている。クッションのなかのフワフワした中綿が、表面のほつれからはみ出しかけているような場面が、常に彼女の頭の中でイメージされている。彼女はその内と外が微妙に連続することに興味があったのかもしれない。
■展覧会のタイトルにあったDOMESTICATIONとは、「飼育すること、飼いならすこと」という意味がある。何故このタイトルをつけたのかを山崎さんにたずねてみた。「ずっと、キッチンのなかとか、暮らしのなかのもの等、DOMESTICなものに興味があったんです。最近は、DOMESTIC VIOLENCE(家庭内暴力)とか、悪い響きとのつながりで聞くことが多くて、少し残念だったのです。最近読んだ人類学の本に『DOMESTICATION』というのがあって、そこからこのタイトルはとったんですけど…」
■その人類学の本には、「飼いならす」ということをけっして否定的には書いていなかったのだそうだ。家畜を飼育して、私たちはその肉体から食料や皮製品など様々なものを得る。トイレから出れば手を洗う。例えばこれは衛生面からの習慣的なものだが、こういった人の日常生活のなかにも、子どもの頃からの指導があった。言葉をかえれば、私たちも‘飼いならされ’てきたわけだ。
■黒いコートは男性、白い水着は女性が記号化されて出てきたものと思われるが、シンプルなかたちのなかに、幾重にも重なる彼女のメッセージがこめられていた。
山崎暢子展 DOMESTICATION
1999年4月20日ー25日
ギャラリーココ(京都)
tel.075-752-9081
女性用のワンピース水着の陰と陽の組み合わせ
どの作品にも「point de capiton」のタグがついている
牛の模様のクッション
ハンガーにかかった黒いコートとクッション。これらも全て表面にはタイルが貼られ、中綿が入れられている。
1999-04-20 at 03:11 午後 in 展覧会レポート | Permalink
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a014e885bb6e5970d01538ef40f0a970b
Listed below are links to weblogs that reference 山崎暢子展 DOMESTICATION: