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1999/03/13

重森三明展 MONADE PROJECT

「形式に則って思考するアート」

art59_m01Monade in hand(壁に投影されたヴィデオから)


■4つのヴィデオ・ソースを用いたヴィデオ・インスタレーション《モナド・プロジェクト》では、2辺の比率が1:√2の長方形をもつ箱のようなモナド(単子の意)が、ミニマルな反復により増殖を繰り返していく。モナドの二つのポジションとして陰と陽がある。この二つには性別はないとされているが、他のモナドと構成され、あるポジションを得たときに、分裂したり、融合したりしながら、性別が決定されていく。

■回転を繰り返していく動作がヴィデオにも収められている。この動作は地表と天空のコミュニケーション、あるいは地上と地下の陰陽の運動と考えられ、垂直に運動を繰り返す。また、宇宙の増殖のシステムに呼応するものを考えられているのが増殖という水平の運動だ。

■映像が大きく投影される薄暗い会場の傍らにコンピュータの端末が置かれ、観客がこの運動のシミュレーションに参加できるようになっていた。単純な繰り返しの連続なのだが、この《モナド・プロジェクト》の体験から、さまざまな小さな生命体が細胞分裂を繰り返しながら、大きな宇宙を構成する要素をつくりだしていく、ということが実感できた。当初の計画では、重森氏があらかじめ制作した運動のヴィデオと、会場を訪れた人がつくった運動が交わっていくようなかたちを想定していたが、物理的な問題から実現できなかったという。

■白が基調となった構成要素。形式がかなり優先され、臭いや触角という感覚的なものにはたらきかけてくるものはない。しかし、こんなふうにノイズがない場であったからこそ実感できたものもあったように思う。重森氏は、京都に生まれ育ち、美大のデザイン科を卒業した後、長くフランスに留学し、帰国した。CCA北九州でリサーチ・プログラムを終え、日本での制作活動の第一弾となったのが、この《モナド・プロジェクト》である。京都もフランスもよく知っているからこそ可能なハイブリッドであった。お作法もちょっと気取ってフランス風の京料理、という印象をもった。

重森三明展
MONADE PROJECT
1999年3月13日~28日
京都市四条ギャラリー
tel.(075)223-1851

art59_m02


2つのモナドが床を回転している Monadewares(壁に投影されたヴィデオから)

art59_m03


2つのモナドが床を回転している Monadewares(壁に投影されたヴィデオから)

art59_m04


Monadaction(モニターに映ったヴィデオから)

art59_m05


筆者もモナドのユニットをパソコン上で構成してみました

art59_m06


名付けてMonara(筆者の姓とひっかけました!)

1999-03-13 at 08:45 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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