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1999/03/13
広くて狭いこの世の中 ヨシタケシンスケ展
「このごろのあのころ」
「P.O.M.system」。かぶると真っ暗で、誰かがリモート操作してくれる光のほうにしか進めない
■たとえば「それもいいかもね〜」なんていうときに、人は言葉のウラにいろんな感情を隠している。「しょうがないからそれにしてやるか」とか、「あっちがいいけど波風たてるのもな」とか。言葉のウラを全部深読みするには、他人は多すぎるし、いろんな意味で自分が小さすぎる。すべての人は誰かにとっての他人である「お互い様」というわけで。
■でも、だからって割り切れるものじゃあない。思い通りにならない他人へのジレンマや、どうしたらいいかまったくわからない八方ふさがりな時とか、他人に囲まれて生きる限り避けられない状況もある。でも人間には知恵があり、自分を生きやすくするための「工夫」もできるのだ。この展覧会はまさにそんな知恵の博覧会だ。
■たとえば
●瞬間瞬間が選択のくり返しで、選択の蓄積が人生だと気付いて恐くなったときには→「P.O.M.system」。頭からすっぽりかぶって、誰かが操縦してくれる光にしたがって進む方向を決めればいい。
●誰かに直接悪口は言えない、だけど言いたい、なんていうあなたには→「DIVIDER」。二人一組でかぶれば、どっちの発言かわからなくしてくれるスピーカー。これでどんな罵事雑言も責任は二分の一!
●けっして逃れられない私を取り囲む世界。ホントは部屋に隠れていたいけど、外出しないと生きていけない。ギブミーアシェルター! なんてヒトには→「WING」。背中に背負って外出、隅っこさえ見つけてしゃがめば箱になって外界から遮断してくれる優れもの。といった具合に、心当たりのあるシチュエーションに救いの手を差しのべてくれるものばかりだ。
■会場の奥の壁に貼られた、彼が日々感じたことなどを描いた小さなイラストのひとつに、インタビューのマイクを向けられて「休日は大体落ち込んでます」みたいに答えているというがあった。そうだよなあ、「休日いっつも楽しくやってま〜す」なんて言える人、そんなにいない。それでも生きていかねばならないとき、発想とそれをカタチにする勇気があれば、自由になることだってできるんだ。それは広くてとても狭い世の中において、とっても心強いこと、なんです。
ヨシタケシンスケ展「このごろのあのころ」
1999年3月13日(土)—4月11日(日)
space BIG ART横浜市神奈川区神奈川2-10-17宮本ビル2階
tel.045-450-5047
13:00〜19:00 月火休
words:桑原勳
「DIVIDER」。二人の発言がスピーカーから聞こえるが、どちらの言葉か外の人には分からない
「WING」。これを背中にしょって部屋の隅にしゃがむと、ちょうど箱状になって隠れることができる
壁には日記のようなメモがびっしり貼られている
ビルの2〜4階をヨシタケ氏含め8人のグループ「studio BIG ART」で借りている。2階が展覧会スペース、3階がスタジオ、4階がヨシタケ氏とメンバーの井上氏の住居
1999-03-13 at 11:25 午前 in 展覧会レポート | Permalink
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