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1999/03/29

ひらいゆう 逃亡絵日記

「ものがたり」 


art61_h01この画像ではわからないのが残念ですが、一番上の写真はナント靴ひもで結びあわされたスニーカーが電線にひっかかっています。


■‘逃亡絵日記’というサブタイトルのついたこの展覧会で発表された多くの写真はメキシコで撮られたものだ。ひらいゆうは、85年にベルギーに留学した後、スペイン滞在を経て、東西を分ける壁が崩壊してからのベルリンに滞在していた。約5年暮らしたベルリンを最近引き払い、帰国した。そして、展覧会前にしばらくメキシコを旅した。

■街のなかを歩きまわりながら、彼女は写真を撮っていく。しかし彼女の作品はドキュメント写真ではない。彼女の記憶の一部ではあっても、ドキュメント写真ではないのは、なぜなら、素材としての写真を使って彼女は「ものがたり」をつくっているからだ。

■会場に「逃亡絵日記」という本人の書いた短いメッセージがあった。“自分の姿に嫌気がさしてその姿が染みついた町を捨てる …(中略)… 私はあきらめたふりをして しばらく影と生活をともにする そして すきをみて 私はまた逃亡計画を立てている”。

■記憶のなかに拾いあげられた風景を、思い出にして、そこに置いて去る。闇のなかに光る「眼」。太陽の光りが私たちに色を与えてくれる。網膜に映った色は人によって異なる。モノクロ写真には色はないが、そこに映った光りの粒子を確認することで私たちは色を感じることができる。街によって光りの反射はまったく違う。

■ドイツ国内でもけっこう北に位置するベルリンの冬は寒く、日照時間も短い。南半球の乾いたメキシコの大地に照りつける太陽が彼女を魅了したことは云うまでもないだろう。ものがたりが、次から次へとつくられていく。ひらいゆうが、逃亡の旅を続ける限り。

ひらいゆう展‘逃亡絵日記’
1999年3月29日~4月24日
ギャラリー ラ・フェニーチェ(大阪)
tel.(06)6244-6160


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塀をつきやぶった木の幹がこんな変身をとげました。

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フェンスの影がくっきり

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この赤いシリーズの壁の向かい側の壁にはナイト・ブルーの目が掛かっていました。

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ポストカードにも使われていた少年が海に飛び込むシーン。どこまでも飛んでいきそうに見えます。

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日本の公衆電話とベルリンのアトリエの窓辺に座るセルフポートレイト。

1999-03-29 at 01:52 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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