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2008/03/23

向き合えば省みる心ー田中恒子コレクションによる太田三郎展

20080311b 切手という誰にも馴染みのあるものを作品にすることで知られる太田三郎氏。そのなかでも、戦争をテーマにした「POST WAR」シリーズの全作品が現在、京都のぎゃらりーすずきで展示されている。現代美術のコレクター、田中恒子氏が20年以上をかけてコレクションしてきたものだ。

会場に入ると、整然と並ぶ作品の展示の美しさに目を見張る。太平洋戦争で行方不明になった日本人兵士の「兵士の肖像」、中国残留日本人孤児の肖像「私は誰ですか」、「被爆者」、「被爆樹」など、タイトルごとに展示された作品それぞれのサイズは大きなものではない。けれど、全シリーズが一挙に並び、ひとつひとつの小さな肖像切手が語りかけるような空間は、実に圧倒的だった。展示構成は太田氏自身が手がけたのだそう。

戦争の記憶や痕跡を切手という小さな形にとどめながら作品化し、その存在やメッセージを未来へつなげていこうとするアーティストもさることながら、そんな作家と作品に惚れ込み、長い年月をかけて収集してきた田中さんの心意気がまた素敵だ。「コレクターって伴走者だと思うんですよ。」という田中さんの言葉には、美術の持つ力と表現の可能性への期待、そしてなにより作家と作品への愛情にあふれていて、ただただ打たれる思いがした。
素晴らしい展覧会なのでぜひ足を運んでほしい。

2008年03月11日 〜 2008年03月23日(最終日は17:00まで)

ギャラリーすずき
http://keage-g-suzuki.com/
〒605-0046
京都府京都市東山区三条通りけあげ(都ホテル前)
TEL&FAX 075-751-0226
地下鉄東西線けあげ駅2番出口徒歩3分


words:酒井千穂

2008-03-23 at 12:52 午前 in 展覧会レポート | Permalink

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