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2007/10/03
ワールドリポート・ホーチミン市編
去る7月28日、ベトナム・ホーチミン市(サイゴン)で一つ伝説的アートイベントが生まれた。生みの親はAsialinkのキューレーター・イン・レジデンスとしてアーティストイニシアティブa little blah blah(albb)に4ヶ月間滞在した越系オーストラリア人のThea Baumann(テア・バウマン)。
左) Alice Lang "It Came from the River"
このイベントThe Last Vestigeへの招待状を受け取った招待客が夜7時に続々と会場に集まってくる。オートバイで1時間ジャングルを走り抜けてくる者。中心街から主催者が用意したバスで連れ立ってやってくる者。彼らが知らされているのは招待状にある住所に指定時間までに着けば何らかのアートイベントに参加できるらしい、ということのみ。車内では国境越えを思わせるような書類審査や抗細菌テスト(もちろん架空のテストだが)をパフォーマー達が役人となり行っている。車内には興奮と不安の入り混じった空気が流れる。
ホーチミン市郊外第9区の指定場所に着くとそこにはコテージ一軒とサイゴン川に浮かぶ一艘の木製の遊覧船。そしてそれにかかる一本の桟橋。100名余りの招待客はまずコテージで軽食やカクテルを飲みながら待たされる。8時半、空がすっかり暗くなった頃、約20人ずつのグループに分けられた彼らは順番に薄暗い遊覧船に誘導される。その時点で中に何があるのかはまだわからない。配布された船内マップを頼りに個々の冒険が始まる。細胞分裂を起したようなソフトスカルプチャーで埋め尽くされた空間にはこちらをじっとみている一人の女性。赤い部屋で永遠の眠りについたように横たわるパフォーマー達。サロン、ギャラリィー、4つの客室、アッパーデッキのそれぞれのインスタレーションやパフォーマンスに共通したムードはまさしく「ポスト・アポカリプス」。”この世の果て”そして”時空の狭間” にいるような<虚無感>と、会場をとりまく熱帯気候独特の空気重やジャングルの持つ<生命力>が奇妙なコントラストを見せる。ここでは個々の作品の解釈ではなく、会場の空気を5感で感じることが招待客に課せられた唯一の課題である。
共産主義政権下で真っ向から政府に立ち向かったら表現の場が極端に限られてしまうベトナムでは、オルタナティブであることは必須であり、昨今様々な挑戦が試みられてきた。ベトナムでは土地の税金を払えないものは水上生活をする。治外法権ではないが、少なくとも税金からの逃げ道として有効な策である。水上でのアートイベントは検閲からの逃げ道としてこの原理を応用したものといえるかもしれない。招待客たちも"オルタナティブ"の意味を充分に体感した夜となった。
参加アーティスト:
Alice Lang
Madeleine King
Imagination:Suprnation
Ladylump (aka Alicia King)
Lucy Dyson
Vivian Hogg
Sue Hajdu
Thea Baumann
Philip Brophy (同時期関連イベント"showtime"として作品を提供)
各作品の詳細及びカタログは近日中にThe Last Vestigeもしくはalbbのブログ上で発表予定。
The Last Vestigeブログ
a little blah blahブログ
上) Imagination: Suprnation " immortiS mutatiS mutandiS h5nOneness escort
agency and carrier craft service"
下)Sue Hajdu with performance in collaboration with Thea Baumann " MAGMA| the innocents
2007-10-03 at 12:53 午前 in ワールド・レポート | Permalink
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