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2007/06/23
VICE VERSA VERTRIEB:アート系出版取次
ベルリンから、かないみきさんの6月のレポートです。
ミッテ地区のとなり、プレンツラウアーベルク地区には、若いカップルが多く住む。数人のママたちが一列になってベビーカーを押す姿は、まさに赤ちゃん軍隊によるパレード。週末の公園は家族連れで溢れ、洒落たカフェやレストランが広場を囲み、ユニークなファッションやインテリアの店も賑わう。そんなファミリー・ライフと若者カルチャーが融合するこの地区で、道に面するアパートの1階に、こぢんまりとした建築やデザインなどの個人事務所をよく目にする。自宅近くに便利なスペースを見つけ、「何か」を始める。これもベルリンらしいスタイルだ。
今回紹介したいVICE VERSAもそのうちのひとつ。窓ガラス越しに置かれたいくつかのアート・ブックが気になり足を止めたが、普通の書店とは、どうもちょっと様子が違う。そこは、アート系出版物のみを取り扱う、珍しい出版取次だった。店の中へ一歩足を踏み入れると、壁を隔てて左手がショールーム、右手がオフィスとなり、忙しそうに2−3人のスタッフが電話のやり取りや、封詰め作業をしていた。ショールームには大きなテーブルといす、棚には建築やデザイン、写真や作家の本が積まれ、ガラスケースの中には、オブジェのようなスペシャル・エディションが無造作に並ぶ。「フリーズ」や「アートフォーラム」といったアート雑誌も扱っている。ここでは直接の販売はしていないが、主にドイツ語圏のアート系書店への流通をしている。そういった書店、美術館やギャラリーに入っているブック・コーナーの経営者がここへやってきて、実際にそれらを手に取りたしかめ、注文することができる。最近の人気書籍は、今年の春にミュンヘンで開催された、写真家のアンドレアス・グルスキーによる大規模な個展のカタログだ。
アート系出版物のテーマや型は多様化し、出版業界の不況を物ともせずに、今、その売り上げは伸びているという。つい先日、ドイツのカッセルで幕を開けた「ドクメンタ 12」でも、世界各国から、およそ90ものアート・パブリケーションが参加する「マガジンズ」企画が展開している。ベルリンの住宅街にひょっこりと現れるローカルなアート系出版取次や、カッセルからグローパルに発信する、コミュニケーション手段としてのアート出版物。「本」という別の形式となり増大し、個々の手元へと運ばれるアートが、この先、どのようなメッセージとなり得るのか。今後もアート系書籍や雑誌の動向から目が離せない。
words:かないみき
2007-06-23 at 11:01 午前 in ワールド・レポート | Permalink
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