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2007/06/24
ベトナム・サイゴン発クリエーターグループ“モガス・ステーション”第52回ベニス・ビエンナーレで作品発表
ベトナムからライター Motoko Udaさんの6月のレポートです。
共産主義政権下で未だに文化検閲のあるベトナム。家族や自身の安全を犠牲にしてまで表現することに躊躇する作家たちが少なくない。 大型国際展で“ベトナム代表”というと外国籍を持つ“ベトナム系”外国人作家が主である。彼らには帰る国がある。海外で発表された作品に関しては、ベトナム政府の目も届き難いとはいえ、過去に海外で発表した作品の内容が元でベトナム出入国禁止になった例もある。海外で教育を受け、発表する機会に恵まれた外国籍ベトナム人作家の作品は切磋琢磨し合いながら洗練されてゆく。しかし、ベトナム国籍の作家にはその機会はまだ限られている。
撮影準備風景より copyright Mogas Station 2007
そのような環境のなか、外国籍の作家たちとコラボレーションをしながら少しずつ国際的土俵に挑戦してゆくベトナム人作家たちにここ数年注目している。そのうちの一人がHoang Duong Cam (ホアン・ズーン・カム)である。独学で英語を習得し、 積極的に新しい表現の場を求めてきた。 そして彼を含むホーチミン市在住の多国籍メンバー8人で昨年構成されたのがMogas Station (モガス・ステーション)である。
A.ART magazine創刊号表紙 copyright Mogas Station 2006
Mogas Station(モガス・ステーション)は発足して間もなく、昨年の第1回シンガポール・ビエンナーレのキュレートリアル・リサーチで訪越中の南條史生氏の目にとまり、同ビエンナーレで国際展デビューを果たした。そこで、ベトナム初となるアート雑誌 A.ART (エー・アート) 創刊号を「作品として」発表。そして今夏、第52回ヴェニス・ビエンナーレ2007の付随プロジェクトとしてBiljana Ciric (ビルジャナ・シリック) がキュレーションする「Migration Addict Project (移住中毒プロジェクト)」のベトナム代表として「 Rokovoko (ロコボコ)」と題したビデオ作品を発表する。
撮影はベトナムの海で行われた。氷塊にも、壊れた白壁の一部にも見える物体が一つポツンと海面を浮遊している。そしてその上でMogas Stationのメンバーが日常の何気ない動きをパフォーマンスしている。日常とは逸脱した海上で孤独に繰り返されるその動きにはやがて狂気の沙汰にみえてくる。映像と共に流れるナレーションは断片的で「孤独」や「郷愁」を語る。観る者として、ベトナム代表の作品だからといって、亡命を余儀なくされた難民たちのストーリーと直結させるのは短絡的だと思う。しかし政治的に敏感なメッセージを含んでいるという印象には変わりがなく、この作品がベトナム国内で検閲を通過し公開される事はないだろう。
どのようなきっかけであれ、ベトナム人作家達が国際舞台で作品を発表できる機会が増えてゆくことはベトナム現代アートの発展において不可欠である。今後もMogas Stationの躍進に期待したい。
撮影準備風景より copyright Mogas Station 2007
ZKM | Museum of Contemporary Art: Thermocline of Art. New Asian Waves (June 15–Oct 21, 2007)
2007-06-24 at 12:59 午後 in ワールド・レポート | Permalink
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