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2007/05/18

INDEX#3―経験の効用―

P1010097_16 若手アーティスト発掘の気流に伴って、行幸地下ギャラリーで開催中のアートアワードトーキョーや、2006年度に一新した東北芸術工科大学の卒業/修了研究・制作展など、美術系大学出身者を中心とした発表のための場の演出が盛んになっている。現在トーキョーワンダーサイト本郷で開催されている「INDEX#3―経験の効用―」もまた、東京と京都の美大出身のアーティスト10名による展覧会である。


展示室内では壺と爆弾、帽子や赤丸が描かれた楽譜と、その楽譜の断片を読みとりながらピアノを演奏するパフォーマンス映像(太 田麻里)、鳥の餌とイースト菌を混ぜて焼成した土器や排泄物を想わせるかたまりと、電話ボックスや植木等を配したインスタレーション(栗原良彰)、ガラスのなか に住むという設定のマリモに似た立体と、『結晶学』というタイトルの冊子(松宮硝子)など、表現形態と使用される素材の多様さが特徴的で、ひと つひとつ寸劇でも見ているような気持ちにさせられる作品群が展開されていた。

なかでも印象に残ったのは、ともに1981年生まれの林加奈子と戸田祥子によるサラエボでのアートプロジェクト。林は道路が破損してできたくぼみや、植木と植木の隙間に人間を配置するパフォーマンス、あるいは壁の亀裂にリンゴやバナナを詰め込む行為によって、あらゆる凹凸を平らにしようと試み、その様子を写真におさめている。P1010100_4
人間や果物を凹にフィットさせるという、まるで子どもの思いつきの遊びのようなアプローチは、それまで無言で佇んでいたはずの道路の陥没や壁の亀裂部分に有機的な空気感を付与していた。今回林はワンダーサイトの外壁を利用したインスタレーションも行っているが、特にいまだ紛争の傷跡が残るサラエボで制作されたシリーズは、遊びの軽やかさと場所性との対比が際立って感じられて興味深かった。

一方戸田は「Personal Archives-summer Days-/-stones」で、自分と同姓同名、同じ出生年の刻まれた墓石を異国で偶然発見するという語りから出発し、その墓石の出所を辿る旅に出る。フィクションとノンフィクションを織り交ぜた戸田の手法はソフィ・カルを想起させるものの、自己の分身と墓石を媒介に他者と接する展開は独自の視点となりえていた。

INDEX」は2005年の第1回目開催から今回3度目を迎えており、2回目からトーキョーワンダーサイト、3回目から京都精華大学のshin-biも巡回会場に加わっている。京都造形大学の学生が運営と進行を担当する。
INDEX」に限らず、若手アーティストの公的な発表の場が増えていることは良い傾向だ。今後は企画の恒常化を目指し、東京と関西だけでなく、東北や名古屋、九州のアーティストまでカバーするなど、より幅広い展開を期待したい。

P1010102_2 INDEX#3―経験の効用―
トーキョーワンダーサイト本郷
2007
55日(土)~63日(日)
月曜休 
11:0019:00 無料
TEL 03-5689-5331
東京都文京区本郷
2-4-16

words:高橋実和

2007-05-18 at 08:04 午前 in 展覧会レポート | Permalink

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