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2007/05/16

中国五千年 漢字の姿[フォルム]三井聴氷閣拓本名帖の全貌

古代の篆刻文字を残すための手段

248_02_3「美人骨氏墓誌銘(初拓)」隋時代

 希少な拓本ばかりを集めた展覧会が3つのミュージアムで開催されている。拓本とは、石碑等に篆刻された文字を、写し取った紙面のこと。その昔、中国の著名書家らの名筆を広く鑑賞するために制作されたものである。既に原碑がなくなって拓本のみでしか存在しないもの(孤本)もあり、古い時代にとったものほど価値が高い。最古の拓本は648年のものと云われている。

 拓本の取り方には湿拓と乾拓があり、石碑に当てる紙の湿乾の違いによる。碑帖によく使われているのは湿拓で、碑に当てた紙に水を含ませ、ブラシで叩いて凹部分に紙を押し込む。タンポに拓墨を塗り、ある程度紙が乾いたら墨打ちをすると文字部分が白く浮き出てくる。こうして写し取ったものを短冊状に切り取って切り張りし、冊子スタイルで仕上げている。書の世界では、石碑から取ったものを「碑帖」、名筆を石や木に篆刻して取ったものを「碑法帖」と呼んでいる。  三井記念美術館では新町三井家9代三井高堅(雅号:聴氷閣)のコレクション530点のうち80点を展示。紀元前5〜4世紀の石刻文字から時代順に唐時代の能筆家のものまで並んでいる。墨打ちがよく取れていない部分に朱色で字が補足されていたり、紙面の空欄に押印された歴代の所有者を証の数もそれぞれ状態も様々。拓本の価値は著名な人物の印に左右されたという。作品としては地味なものだが、じっくり見ていくと、筆跡の美しさ、少し青みがかった墨の色や保存状態の良さに感心。各拓本ごとの解説や書体(篆書、隷書、草書、行書、楷書)についてのパネルなど親切な展示構成で、拓本に興味を持つきっかけになる展覧会。

248_02_2_2248_02_1_3 左:「唐人真書六種」(宋拓)唐時代

右:ミュージアムショップで販売している拓本セット

中国五千年 漢字の姿[フォルム]三井聴氷閣拓本名帖の全貌
三井記念美術館
2007年4月21日(土)〜7月1日(日)
月曜休 10:00〜17:00
入館料:一般800円、大学・高校生:500円、小・中学生:無料
TEL 03-5777-8600
東京都中央区日本橋室町2-1-1三井本館7F

●槐安居中国碑帖コレクション
2007年4月17日(火)〜7月1日(日) 東京国立博物館
●中村不折碑帖コレクション
2007年4月28日(土)〜7月1日(日) 台東区立書道博物館
※いずれの館でも、チケット売場で他2館の半券を提示すると団体割引料金で入場できる

words:斉藤博美

2007-05-16 at 07:52 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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