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2007/03/26
台湾アートの内と外--- ふたつの国際展をとおして
今月から月1回、台湾在住のアートライター、岩切みおさんにもレポートを寄稿していただきます。
2003年 ベネツィアビエンナーレ台湾館
photo courtesy of Taipei Fine Arts Museum
台湾人の目は常に外を向いている------台湾に住んで、つねづね感じてきたことだ。おそらく、世界中で「国」として認められないなど、政治的に難しい立場にあることが、文化面にも強く作用しているのだろう。国際的に認められることは、どの国においても目指されていることだとはいえ、ここではそれが、内部の充実をはるかに超えて、至上のものとされているように見える。
台湾は、ヴェネツィア・ビエンナーレに、1995年から場外参加している。 今年のテーマは「アトピア」(場所でない場所) 。2003年の日本館テーマ「ヘテロトピア」(異なる場所)を彷彿とさせるが、コンセプトに目を通してみると、こちらはかなり政治的。「台湾」という名前に付随する政治性について論じつつ、こういった「場所とみなされない場所」性が台湾の文化にあらわれているさまを、展覧会という形で見せようとするものだ。
参加作家は、映画監督の蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)など現代美術以外からの3人を含めた5人。残りのひとりはアメリカ在住なので、地元アート界から選ばれたのは、湯皇珍(タン・ホアンジェン)ひとりのみ。ほかの領域の作家が混じる自由さは、素直に喜ばしいし、畑違いの蔡などは、個展でも良かったほどの実力派であるのは間違いない。でも、もう地元には面白い美術作家がいないということなのかな?そんな疑問がふと心に浮かぶ。 実は、先日閉幕した台北ビエンナーレでも同じことが繰り返されている。地元アート界からの選抜はひとりのみ。多くの作家が肩を落としたに違いない。以前のような「多少いい仕事していれば、みんなかわるがわる参加できるものだ」という馴れ合いの意識には問題があったかもしれないが、これでは地元からどんどん離れて行ってしまうのでは、という危惧が頭をもたげる。ギャラリーや非営利スペース、そして一般市民を含む地元社会が一緒になってイベントを盛り上げていく雰囲気も、すでにあまり感じられなくなっている。それぞれのビエンナーレに、各作家に個人的な活躍の場を与えるだけでなく、もっと有機的に地元を引っ張っていくような雰囲気があれば、と思うこのごろだ。
words:岩切みお
2007-03-26 at 12:57 午後 in ワールド・レポート | Permalink
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