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2006/11/06
アニッシュ・カプーア「Sky Mirror」(ニューヨーク)
毎月1回、ニューヨーク在住のライター、塩崎浩子さんからレポートを寄せていただくことになりました。今回は、先月まで公開されていたアニッシュ・カプーアのパブリックアートのレポートです。
その絢爛さに惚れ惚れするアニッシュ・カプーアの彫刻は、いつも、今そこにあるはずの空間に対する認識を混乱させ、非現実的なもう一つの空間へといざなってくれる。
9月19日から10月27日までマンハッタンのロックフェラーセンターで展示された屋外彫刻「Sky Mirror」は、マンハッタンの冷たく澄んだ秋の空をステンレススチール製の巨大な「鏡」に映す作品。この屋外展示は、村上隆の極彩色の仏像型彫刻でも話題になったPublic Art Fundによるパブリックアートシリーズで、これまでにナム・ジュン・パイクやジェフ・クーンズらがこの場所で作品を発表している。
画像左:同じく凹面側。名物のアイススケートリンクもオープン。右:横から見たところ
鏡は直径約10メートル、凹凸面を持つ巨大レンズ状になっていて、5番街とロックフェラーセンターを結ぶ通りに、地面に置かれた台座に斜めに突き刺さるような格好で設置されている。凹面はやや上方を向き、ロックフェラーセンタービルや刻々と移り変わる空景を反転させて映し、一方の凸面は5番街に倒れかかるような形で面していて、通りを行き交う人々や車の姿を間近に映している。
凹面側を遠くロックフェラーセンタービル入口付近から眺めてみると、くすんだ街の色と空の色との対比が鮮やかで、空の一部を丸くくり抜いて、街の風景にぺたりと貼り付けたかのよう。見慣れた空が現実のものではないように感じられて、3次元空間にどこかから突然現れたフラットな青い円のようにも見え始める。
凸面、5番街側
カプーアの作品が放つ求心力は、ギャラリーや美術館ではない今回のような公共空間においても感じられた。ただ一つ少し残念だったことは、Sky Mirrorである凹面側よりも、空が映らない凸面つまり5番街側の方が、自分の姿を鏡面に映り込ませようとしたり、カメラのシャッターを押したりする、より多くの人で賑わっているようだったこと。「パブリックアート」としては、それで成功だったのかも知れないけれど。
Words: 塩崎 浩子
塩崎浩子(フリーライター)
1990年から99年まで雑誌『日経アート』編集部に在籍ののち、2002年に米国へ。現在ニューヨーク在住。
2006-11-06 at 09:37 午後 in ワールド・レポート | Permalink
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