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2006/09/09

大地の芸術祭 越後妻有アート・トリエンナーレ2006-その2

その2は、2日目という想定で十日町から川西へ逆に回ります。

TsumarivasconselosElrichGalaikowa十日町市内 65:ジョアナ・ヴァスコンセロス 82:レアンドロ・エルリッヒ  31:カルロス・ガライコア

前日か最後の19時以降にキナーレのヴァスコンセロス作品のライトアップを見ておこう(温泉もあるし)。青い一升瓶が美しい。さて、朝10時のオープン前は、市内の野外作品へ。なかでも四ツ宮公園にあるエルリッヒがオススメ。スパイダーマンになれます。しかしやはり市内より集落。先に一番はずれのガライコワの灯籠作品へ。そこから三ツ山小へ戻る途中に、オバQみたいな顔をデザインしたかまぼこ型倉庫がたくさん楽しめる。開発(好明)クンが来たねって感じで笑います。寅さんみたいなもんです。

MitsuyamaTsumariyamaguchiHonmajun旧三ツ山分校 28:山口啓介 30:本間純

6戸しかない集落の旧三ツ山分校へ。妻有の花をカセットケースに樹脂で固めた山口啓介。本間純の作品は、妻有のかたちをした彫刻から雫が落ち、プールに波紋が広がります。浅いのに深ーい水の底。反転した方が、もとの妻有のかたち。2000年、2003年の作品と併せて、絵本の空間をめくるような感覚があります。


Ubusuna01TodakaFurugori13〜21:うぶすなの家。 9:戸高千代子 12 :古郡弘

願入陶芸村の「うぶすなの家」。空き家を改装し、2階が茶室、1階がレストラン。8人の陶芸家と華道家が出品し、かまどやテーブルなども陶で焼き上げた。山菜ぎょうざなどの料理がおいしい! 村に産業が入り、働くお母さん達の顔が変わった。戸高千代子の溜池の陶は、水面がぴたっとするほど鏡面効果。古郡弘は、土を掘り返して積み上げた遺跡のような作品。またもや圧倒されるが、会期スタートに間に合わなかったのは、理由はあるだろうけどやはり考えてほしいところ。

124kaikkonen01_1KurataniKuratani2川西エリアより 124:カアリア・カイコネン 十日町エリアより 56:倉谷拓朴

川西の一番はずれだが、木村育子といけばな美術館も見られるとなお良し。川西では、カイコネンの服の橋が圧巻だ。倉谷拓朴は、茅葺き屋根の家を改装し、写真や映像を使ったり、枯山水をつくったり。家と作品がなじみ、土着的な匂いがしてきた。

Suga01Suga02Fukutakeizumi2点とも菅木志雄(小山登美夫ギャラリー) 泉太郎(HIROMI YOSHII)

大地の芸術祭と連動した別企画のFUKUTAKE HOUSE。ベネッセの福武總一郎会長が、飯田高誉ディレクターを立て、都内のギャラリーと東大博物館に声をかけた。経済面から芸術祭の継続が危ぶまれているなか、ゆくゆくは自立した運営をめざし、芸術祭を支援するために別輪で駆動を始めた。菅木志雄は、初日にパフォーマンスも行った。泉太郎の映像とインスタレーションはおもしろい。特に手に描いた鳥を飛ばす映像と、ドリンク剤の瓶を回して止まった方に歩き、壁につかえてはまた繰り返す映像作品。キャンバスのフレームにつかえるみたいでもあり、ループのなかのループで出て行こうとする間抜けた切なさもあり。回転する瓶が時々すごくきれい。狭い倉庫を使い、埴輪などの備品を使い、扉を開け閉めする。学校や村に残ったものを使った作家は多くいるが、あえて記憶とかプロセスとかを断ち切り、ものの意味や文脈を変えて勝負している。


FukutakekoganeKoganezawa02Fukutakekito2点とも小金沢健人(HIROMI YOSHII) 鬼頭健吾(ギャラリー小柳)

学校にあった楽器を使い、それぞれがマッサージ器の振動により15分間隔で順(順不同?)に演奏される小金沢健人の作品。全部が重奏されたときはとりわけ楽器が生きているみたいだ。ちょっとジャン・ティンゲリーのキネティックアートを思い出す。特に鉄琴に、マッサージ器が触れる鍵盤の音→ペダルが踏まれているために伸びる音→モーターが回ってリヴァーブ(反響)音というように、増幅とか影響とかの関係が見て取れる。時計の時間ではなくそれぞれの時間を生きて、時に共鳴するような。最初は観客も教室内を歩けたのだが、無人で楽器が鳴り出すために不思議に思う人が作品に触って壊れてしまうため、やむなく外から見るようになってしまった。最初の、脇で2台の扇風機ががちゃがちゃ動いているのもはみ出しぶりがよかったのだが(写真中央)。演奏のない時間は、外からのセミの鳴き声が耳に入る。校内を歩いていて遠くから聞こえて来る感じもいい。また、音楽室からは 鬼頭健吾のループが延びて来る。スケスケであって密度と動きのある空間。FUKUTAKE HOUSEにはキュレーションはなかったのだが、菅ー小金沢ー鬼頭とが、自立したものとものとの差異や関係といったテーマでつながっているように思った。また準備期間が少ないながら瞬発力で見せたことが大地の芸術祭本体と対照的だった。ただ、後から入った草間彌生作品はあまり合ってる感じはしなかった。

NasuruKikuchiErkumen57:ムタズ・ナスル 58:菊池歩 34:アイシャ・エルクメン

FUKUTAKE HOUSEつまり旧名ヶ山小にあるムタズ・ナスルの万華鏡インスタレーションは、大地の芸術祭からの参加。始まってすぐ公開中止になり、8月末にようやく再開された。中平集落にある菊池歩のビーズの花は美しい。ずっと見ていると、輪郭があいまいになってぶれてくる。光や天候によっても変わるし、夜はライトアップ。また、もし間に合えば見てほしいのは、アイシャ・エルクメン。地震で置き去りになったほぼそのままの空き家を、板を渡すなど最小限に手を加えて見せている。外は蔦で覆われ、時間を封じ込めていくという。町はずれの集落なので行きにくくはあるが、ここを見るかどうかで大地の芸術際の印象が異なるようにも思う。

2000

2003


各作品写真がここにあります。
新潟県庁十日町地域振興局

経過を綴った北川ディレクターのブログがあります。
北川フラムのブログ

words:白坂ゆり

2006-09-09 at 06:27 午前 in 展覧会・イベント情報 | Permalink

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